貯蓄に対するモチベーションを上げるものとして一番スタンダードなのは「不安」である。
 将来に不安を感じるから、それに備えて貯蓄するのだ。
若者が金を使わないというのは、それだけ最近の若者は将来や老後に不安を感じているということかもしれない。
 つまり「老後なんか来るかわかんないし、若いうちに使っちゃおう!」などと思うのはすでに、若くすらない、中年の発想ということだ。

 しかし、不安というのは、焦りを呼び、焦りは判断力を鈍らせるので、逆に「不安になっている奴を騙して老後資金を貯めよう!」という奴の餌食になりやすくもある。
 それに行き過ぎた不安は結局自暴自棄にもつながりやすい。

 よって、「老後のための貯蓄」という染みっタレワードをポジティブに考えることで、モチベーションを高めた方が良い。

老後のための貯蓄

 まず、「老後のために若いころ我慢するなんて……」と思うのは、人生は若い時こそがトロで、後は残りカス、と思っているからである。
 しかし、成人してから65歳でリタイアするとしたら45年、そこから100まで生きたら35年である。

 つまり「現役時」と「老後」はすでに10年しか違わないのである。すでに若いころ楽しければ老後なんて、と言うにはあまりにも老後が長くなりすぎている。

 それどころか今後、現役時より老後の方が長くなるという可能性がある。老後をないがしろにすると、逆に人生の半分以上がカスになるということだ。

 さらに日本は超少子高齢化である。
 若者より老人の方が多いため、企業も若者より、老人をターゲットにしたサービスに力を入れるだろう。
 つまり我々が老人になるころには「若いころより老後イケてる奴の方が勝ち組」という価値観の逆転が起こっている可能性がある。

 よって「老後のための貯蓄」は決して染みったれ行為ではなく「勝利への布石」である。

 イメージするのは、パート先で70歳まで働かないと生きていけない同世代に「別に働かなくてもいいんだけど、ボケ防止みたいな?」というマウンティングをかます最強の自分である。

 若いころの「勝ち」というのは、“足が速い”から、始まり、“顔がいい”、“頭がいい”、“センスがいい”、“ギターが弾ける”、“フォロワーが100人いる”など、複雑極まりない。
 それが老後、“小金を持っている”という一点だけでだけで勝てるなら、もうここで勝っておくしかないだろう。

 よって「老後のために若いころお金を貯める」というのは、すでに虚しい行為などではないということだ。そう考えれば、老後のための貯金へのモチベーションも少しは高まるだろう。