人通りがなくなったスペイン・マドリードの市街地を歩く医療スタッフ(2020年3月22日、写真:ロイター/アフロ)

MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

(川崎 千春:帝京大学医学部医学科3年生)

 2月19日から3月15日までスペイン・マドリードに語学留学し、マドリードのピソ(シェアアパート)を借りて、スペイン人と生活した。その過程で、新型コロナウイルス感染症の拡大による街の変化を経験した。

 私が到着した頃は、危機感はなく、アジア人差別も受けず、ルームメイトや友人と、ハグとドスベソス(両頬にキス)で挨拶を交わしていた。2月20日から3月1日までは、マドリードからトレド、セゴビアなどスペイン各地を訪れた。世界各地から観光客が訪れていたし、日本人もよく見かけ、プラド美術館も混雑していた。ただし、2月25日にテネリフェでイタリア人医師の感染が確認されてから、街中でCOVID-19の話題をよく耳にするようになった。

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 3月1週目から語学学校が始まった。毎クラスのはじめにCOVID-19の話はするものの、生徒の出身各国の話ばかりで、まだ緊張感はなかった。3月5日、中心街にあるバルでスタンドアップコメディを見た後、インテルカンビオ(言語交流会)に参加した。そのときマドリードに来たばかりというイタリア人もいたのを覚えている。

 3月8日、スペイン南部を訪れた。英国領ジブラルタルがあるためか、イギリスからの観光客をよく目にした。英国領ジブラルタルには、日本、中国、韓国、香港等に過去2週間以内に滞在歴がある人は入国できず、私も入ることができなかった。アフリカ大陸にあるスペイン領セウタからのフェリーの中で、前に座っていた男性が電話で「なぜスペイン政府が何の措置もとっていないのか」「病院で働いているならリスクが高いだろうから気を付けて」と電話で話しているのを聞いた。病院で働く家族か友人と話していたのかも知れない。タリファという町ではお祭りが開かれていて、通りもバルも人で溢れていた。

 3月9日、マドリードの学校は、保育園から大学まですべて11日から休校する、と発表された。この週、語学学校はまだ対応が定まらず、私は金曜日まで通常どおり通い続けた。在宅勤務が推奨され、ルームメイト達は、それぞれ10日、11日から在宅勤務になった。