ポジティブな行動習慣をつけるためにできること

 匿名の書き込みをする人達を、会社の組織に当てはめてみるとこのような法則になると思います。

 ・利益を生む社員:ポジティブなことを書きこむ、オリジナルの考えを書き込む
 ・利益を生まない社員:ネガティブなことを書き込む、批評に終始する

 実はインターネット上の書き込みを見ているうちに、何かに似ているなと気付いたのです。職場の会議室でも全く同じようなことが起きているということです。

 たとえば社内会議で新規事業の提案が出された際に、それに対する反応はさまざまだと思います。「面白そうですね」、「ぜひ自分もメンバーとして参加したいです」、「自分もアイデアがあるので発言していいですか」というポジティブな発言が出る場合と、「そんなアイデア誰でも考えられる」、「絶対失敗する」、「なんでそんな面倒くさいこと言い出すんだよ」というネガティブな発言、あるいは心の内が表れる時です。

 会社の利益を伸ばす方法は主に、「既存の事業の売上を伸ばす」、「新規事業を作る」、あるいは「原価や経費の削減」です。つまり新規事業というのはリスクもありますが、利益を伸ばす要素の一つです。

 仮に稚拙な提案であったとしても何度も積極的に提案する人と、他人の出した意見をひたすらネガティブに批評して傍観するだけの人、どちらが利益を生む可能性のある社員かといえば、前者になります。前者には損失を出すリスクもありますが、それは最小限に抑える策を講じれば良いことで、それよりも利益を生む可能性があります。しかし、後者の社員には利益を生む可能性が最初からありません。

 どのようなことでも前向きに考えようとする人と、反対に否定的にとらえる人がいると思います。否定的にとらえる人の中には、「職場環境のせい」、「生まれ育った環境のせい」、「他人のせい」にする人もいますが、実際は、一人ひとりの「心の内」にその本質があると私は思います。「癖」、つまりその人の心の内が表面化される「口癖」、「書き込み癖」の内容がそのままその人の行動習慣になっていくのではないでしょうか。

 ある方のインタビューで印象に残っている言葉があります。「どんなにつまらない本でも、読み手が面白い人だったらそれは面白い本になるでしょうし、どんなに面白い本でも、読み手がつまらない人だったらその本はつまらなくなるでしょう」。

 理想の職場を作るために、会社側は労働環境を良くするための努力をする必要はありますが、会社に「おんぶにだっこ」で一任するだけでは限界があります。会社としてまず利益を確保しなければ組織の存続自体ができませんし、何より社員一人ひとりの考えている理想の職場像が違うからです。社員も「実名で」積極的に職場環境の改善提案をし、会社がその意見に納得、一目置くような存在を目指したいものです。そのためには提案内容が利害関係者全員にとって「ポジティブ」であることが重要です。

 ポジティブ提案の行動習慣をつけるために、その練習台として匿名アカウントを活用して日々つぶやいてみるのは良い習慣付けだと思います。きっと仕事においてもさまざまな場面で良い効果が出て、その人や所属する組織に良い情報や利益が集まるようになるのではないでしょうか。

前田康二郎氏
著者プロフィール


流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント

/作家 前田 康二郎

 

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)も運営している。

 

流創株式会社
節約ウオッチ(iOS版)