円安がいいの? 円高がいいの?

 「あれ、円安と円高って、どっちが良いんだっけ?」
 「んもぉー! 社長、そのご質問、これで8回目ですよ」

 これは筆者のお客様と、筆者との会話です。
 (同じ質問の回数を数えて、覚えている筆者もイヤな奴ですね)

 為替レートは、「円安がいい」のか? それとも「円高がいい」のか?
すでに投資を経験されている方の中にも、円安と円高がごちゃごちゃになってしまう方がいらっしゃることでしょう。

 為替レートって、日本円を中心に、「日本円からの視点」で考えると、わかりにくくなってしまうんです。

 為替レートは、例えばドルの場合でしたら、

 「1ドルを買うのに必要なお金」

 と考えるとわかりやすいと思います。

 筆者が本稿を書いている時点のドルの為替レートは、「1ドル=109円76銭」です。
 (為替レートって、今では日常で用いることのない、「銭(せん)」というお金の単位が登場するんですね!)

 この109円76銭を、「1ドルを買うための値段」とお考えいただくのは、いかがでしょうか?

1ドル紙幣ドルの為替レートは「1ドルを買うのに何円かかるか」

為替の差が利益を生むこともある

 本稿を書いている時に、109円76銭ドルだった為替レートが、明日には111円になっていたとすると……。
 「1ドル当たりの値段」が上がったことになりますね。
 ドルの値段が上がったから、「ドル高」です。ドル高なので、「円安」です。
 もし1ドル紙幣を持っていたとしたら、明日の111円と、本稿を書いている時の109円76銭との差額1円24銭が利益になりますね。この利益を「為替差益」と言います。

 以下に別の例を挙げてみます。

 1ドルが100円の時に、1ドルを買う。
 1ドルが120円の時に、ドルを円に戻す。

 つまり、「ドル安・円高」の時にドルを買い、そして「ドル高・円安」の時に、ドルを円に戻すのです。
 その差額の20円が為替差益となります。

 当たり前のことですが、ドルを含め、外国のお金に投資をしないと、この為替差益を得ることはできません。

もちろん逆に為替で損することもあります

 もちろん、その逆も大いにあり得ます。

 以下に例を挙げてみます。

 1ドルが110円の時に、ドルを円に交換し、
 1ドルが115円の時に、円をドルに戻す。

 つまり先ほどの例とは逆に、「ドル高・円安」の時にドルを円に交換し、「ドル安・円高」の時に、円をドルに戻してしまう。

 為替レートの差によって生じた損失ですから、「為替差損」ということになります。
 当たり前のことですが、ドルを含め、外国のお金に投資をしなければ、為替差損を被ることもありません。なので、為替で損してしまう可能性のことをよく「為替リスク」とも言いますね。

 為替リスクを恐れて、「外国のお金に投資をしない」という考えも、もちろんあります。
 しかし、「外国のお金に投資をしない」ことは「為替差益を得るチャンス」をあきらめているとも言えます。

ドル神話・ドル信仰―アメリカは世界一の経済大国

 さて、「円が心配」という方の中にも、「ドルならば安心」という方も、読者の中にもいらっしゃることでしょう。

 世界の貿易では、その決済の40%がドルで行われていると言われています。
 貿易を行う国同士が、お互い「ドル以外のお金」の国だったとしても、貿易にはドルを用いている場合だって珍しくありません。

 また、世界190を超える国の中で、アメリカは世界経済の25%近いシェアを誇る、世界一の経済大国です。この事実は、アメリカに対する信頼と安心とともに、そのアメリカのお金であるドルに対する信頼と安心の裏付けになることでしょう。

 ということで、「現金のリスク」を避け、なおかつ「特定の国のお金に集中しない」ためには、円で取引される日本の株式や投資信託などとともに、ドルで取引されているものに投資するのが良いのでしょうか?

 しかし、ドル神話を信じ、ドルを信仰している方々の気持ちは、未来永劫、続くものなのでしょうか?

 今をさること35年ほど前の、1985年当時。アメリカにとって世界一の経済大国の地位は、当時も同じでした。しかし、アメリカの世界経済のシェアは、現代よりも大きく、30%を大きく超えていました。
 つまり、アメリカの世界経済1位という地位は今も揺らいでいませんが、世界経済に占めるアメリカのシェアは、昔よりも下がっているといえます。

【図表2】世界の名目GDPに占めるアメリカの割合
世界の名目GDPに占めるアメリカの割合※2019年以降は予測
出所:IMF, World Economic Outlook Database October 2019