(大西 康之:ジャーナリスト)
2月17日、積水ハウスが55億円を騙し取られた「地面師詐欺事件」を巡り、2018年、社長一派に解任された積水ハウスの和田勇前会長が、4月下旬の株主総会で同社の経営陣の刷新を株主提案すると発表した。認められれば、再逆転という異例の展開だ。都内で記者会見を開いた。
和田は「(阿部俊則会長、仲井嘉浩社長らは)赤信号にどんどん飛び込むような経営をし、この2年半、それをひたすら隠そうとしている」と現経営陣を厳しく非難した。
いまも閲覧制限がかかる調査報告書
事件の経緯をおさらいしておこう。
積水ハウスは2017年、東京都品川区の老舗旅館「海喜館」の土地購入に際して、詐欺師集団「地面師グループ」に計55億円をだまし取られた。不動産を本業とする大企業が、地主を名乗る詐欺師にまんまと騙され、週刊誌でも話題になった。
積水ハウスの和田勇会長(当時)は弁護士や公認会計士による調査対策委員会を立ち上げ、調査報告書を作らせた。報告書が完成した2018年1月、和田氏は「阿部氏に重大な責任がある」と結論づけた報告書を理由に、取締役会で阿部俊則社長(当時)に解任を迫った。
事件当時のCEO(最高経営責任者)は和田氏だったが、阿部氏との間で「会長は海外事業、社長は国内事業」という申し合わせがあったため、国内で起きた地面師事件は阿部氏の責任という理屈である。