「ブレグジット」で注目を集めるイギリスですが、日々のニュースでイギリス経済について語られることは多くありません。今回のイギリスのEU離脱を機に、イギリスの経済規模や通貨ポンドの為替レート、イギリスの株価についてあらためて確認してみたいと思います。
ブレグジット=British Exit (from the EU)
日本時間の1月31日夜、イギリスはEU(欧州連合)を脱退しました。
イギリスがEUを去ることを「ブレグジット(Brexit)」と呼びます。イギリスを表す「British」と、出口を意味する「Exit」を合わせた造語です。
このブレグジットをめぐって、イギリスの政治は大きく揺れ動きました。
イギリスのEUからの離脱を問う国民投票が2016年6月に行われ、その結果は当初の予想に反して離脱派が51.9%の票を獲得し、残留派をわずかに上回りました。ところが、離脱後のEUとの関係などをどうするかについて英国議会は揉めに揉めました。メイ前首相の辞任、ジョンソン首相の就任を経て、国民投票から3年半かかってようやく離脱にこぎ着けたのが今の状況です。
イギリスは市民革命と産業革命が起きた、現代社会の発祥の地ともいえる国です。世界最大の経済大国の座はアメリカに譲って久しいですが、現在もイギリスの首都ロンドンは世界有数の金融センターとして大きな存在感を示しています。だからこそ、ブレグジットは世界の金融関係者が注目するビッグニュースとなっているのです。
イギリスは世界第5位の経済大国
以下のグラフは、国の経済規模を表す名目GDP(米ドル)のランキングです(図表1)。
単位:10億米ドル
出所:IMF World Economic Outlook Database October 2019
EUの共通通貨である「ユーロ」の流通が始まった2002年には、イギリスは世界第4位の経済大国でした。2018年時点でも、中国に先を越されてしまいましたが世界第5位、ヨーロッパではドイツに次ぐ2位の座を保っています。
ところが、IMFの予測に基づくと、2024年にはGDPが世界7位に後退してしまう見込みです。経済成長を続けるインドはともかくとしても、フランスにGDPを抜かれるのは、イギリスとしては心中穏やかではないでしょう。
この予測は2019年10月時点なので、ブレグジットの影響はすでに織り込まれていたと考えられます。EU離脱派の望みどおりイギリスへの移民は減るかもしれませんが、今までのようにEU諸国と自由な貿易ができなくなることが、イギリス経済にとってマイナス要因と見なされており、残留派にとっては今後も頭を悩ませ続ける問題になりそうです。
価格変動が大きいイギリスの通貨「ポンド」
EU加盟国の多くはユーロという共通の通貨を使っていますが、イギリスはユーロを導入せず、ポンドという独自の通貨を持ち続けることを選びました。
ポンド/円の為替レートの推移を見てみると、ドルやユーロとの違いがよくわかります(図表2)。
価格の変動が大きくなりやすいのがポンドの特徴です。特に2008年9月のリーマン・ショックのときは、ドルやユーロと比べるときわめて大きな落ち込みとなりました。2016年6月の国民投票でEU離脱派が優勢になったときも、円高ポンド安が急激に進みました。
この「金融市場で何かが起きたときの振れ幅が大きい」というポンドの特性が、短期的に利益を出したいFX(為替証拠金取引)の投資家に好まれる要因にもなっています。