資産運用を考える場合、資金全体をどの資産(株式・債券・現金など)とするか、その配分比率をどのようにするかがまず大切です。次に、その方針に従って具体的にどの投資商品を組み入れるかを検討していきます。前者をアセットアロケーション、後者をポートフォリオといいます。良い資産運用をするためには、この基本を理解しましょう。

資産運用の基本その1 アセットアロケーション

福沢 隆雄福沢 隆雄
若葉マークの株式投資 代表

 株式は、運用利回りが他の資産に比べて大きいことが期待されますが、リスクも大きくなっています(攻めの投資)。一方、債券(国内)は運用利回りが低いのですがリスクが小さくなっています(守りの投資)。このため、資産運用にあたり運用資産の種類とその資産配分比率を決めるのはとても大切です。アセットアロケーションとは、運用目的、リスクの許容度などに合わせて異なった資産を組み合わせることをいいます。

アセットアロケーション(資産配分)の例
プロのアセットアロケーションと個人の対応

 従来、運用の世界では、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券は「伝統的4資産」と呼ばれ、この資産配分が基本といわれています(例えば、それぞれ25%ずつ配分する)。近年は、国内外不動産(REIT)やその他多くの商品の組み合わせが提案されています。一方、個人向けには、それらをさまざまに組み合わせて運用する投資信託などがたくさんあります。

資産運用の基本その2 ポートフォリオ

 アセットアロケーションの方針に基づき株式を組みこむとして、特定の銘柄(○○株式)だけで運用すると、当該株式の下落があった場合、運用利回りの損失が大きくなります。そこで複数の銘柄を組み合わせることでリスクを分散させ、損失が小さくなるようにします。このように、複数の金融商品を具体的に組み合わせ、分散投資することを、「ポートフォリオを組む」といいます。ポートフォリオの組み合わせは、株式や外国債券などさまざまにあります。以下、複数の株式に分散投資する場合のポートフォリオを説明します。

 ポートフォリオの語源
 ポートフォリオとは、もともと「紙ばさみ」という意味です。欧米では、紙ばさみに資産運用を一括してまとめ、管理するというのが言葉の由来です。また、収益性の管理と投資のリスク回避のための分散投資により、資産の運用を行うという意味があります。

上場株式が2社しかない国の分散投資

 例えば、ある国の上場株式が2社だけだった場合、どのように投資をしたらいいでしょうか。その国は、観光の国で上場会社は「リゾート会社」と「傘会社」しかありません。観光客が多く「リゾート会社」が儲かるのですが、雨が多いので傘が必需品で、傘も良く売れます。

 ある年は、雨ばかり降り続き、観光客はあまり来ませんでした。このため、「リゾート会社」の収益はあまり上がらず株価が下落した半面、「傘会社」は収益が上がり株価が上昇しました。一方、晴れの日が続いた場合は、株価はそれぞれ逆の動きとなります。

リゾート会社と傘会社の株

 そこで、「リゾート会社」と「傘会社」の両方の株式を買い、雨でも晴れでも、全体として儲かるようにします。すると株式投資によるリスクが少なくなります。

2銘柄購入する
ポートフォリオとは、運用の「幕ノ内弁当」

 株価は、業種などにより異なる動きをします。例えば、日本株式の場合、円安となれば、輸出をする企業(外需企業)が儲かります。一方、国内消費者だけを相手にしている企業(内需企業)では、日本国内の景気が良くなれば儲かります。

 株式投資にあたっては、異なる業種に投資を行うなどによりリスク分散しましょう。ポートフォリオとは、弁当でいえば「幕ノ内弁当」のようなものです。焼肉弁当だけ、野菜弁当だけではなく、肉・魚・野菜をバランスよく食べて栄養をとるのと同じです。

 ポートフォリオは、まず2銘柄から、できれば3銘柄から組んで資産形成を行っていきましょう。それぞれ別の性格を持った銘柄を入れましょう。例えば、3銘柄目は食料品を組み入れます。食料品はデイフェンシブ(防衛的)銘柄と言われています。食品は景気にあまり左右されることなく需要があることから株価も比較的安定している、とのことでこのように呼ばれています。

2銘柄の例・3銘柄の例

 分散銘柄の選定がわかりづらい場合は、候補銘柄の株価チャートを5年程度、または10年程度見て、値動きの異なる銘柄に投資しましょう(例えば、ヤフーファイナンスなどで過去の株価の動きを見てみましょう)。株式投資にあたり、分散投資で運用するポートフォリオとして管理する感覚を身につけましょう。

2銘柄の株価の推移例

 次回は、株式投資の配当金と配当利回りについて説明したいと思います。

 第9回 複数の情報源を活用して企業を調べよう