子どもの将来のために教育資金を貯蓄しよう、そのために資産運用しようと考える方は多いでしょう。一方で、どのように子どもの教育に投資すればいいのか、不安に思う方もいるかもしれません。そこで当連載では、現在の世界と日本の教育事情や、すでに巷で語られている「AIの進化が及ぼす未来への影響」などに触れつつ、待ち受けている現実に対し、どのような教育投資が最も効果的かを考えます。「なぜ教育資金を貯蓄する必要があるのか」が明確になることで、資産運用への興味関心がより一層、高まることを期待しています。
AIは産業革命と同等以上の変化をもたらす
これから10年、20年後に社会へ飛び立っていく子どもたちを、どのような世界が待ち受けているのでしょうか。産業革命と同等以上に社会環境を激変させると言われている、「AIの進化が及ぼす未来への影響」とはどのようなものでしょうか。
「社会環境が激変する」と聞いても、ぴんとこないかもしれません。例えば、米国フォード社が大量生産技術によって生み出した自動車「Tカー」の登場により、ニューヨークの街並みがいかに変化したのかを、下の写真が物語っています。
1900年のニューヨークでは、馬車が整列して轍の上を走り、馬の排泄物を処理するビジネスが存在していました。しかし、フォードのTカーの登場により、世の中の景色は一変。1913年には、馬車や馬の排泄物を処理するビジネスが消え、新たに道路にセンターラインをひく仕事やガソリンスタンドが生まれました。1990年の時点で、ほんの十数年後にそのような状況になることを、一体誰が想像できたでしょうか。
我々が経験した例をあげれば、インターネットの登場・進化があります。それにより多くの仕事がなくなり、子どもの頃によく少年マンガを買いに行った近所の本屋や、自分の子どもが生まれて初めての写真の現像をしてもらった写真屋、街の小さな旅行代理店が、次々と消えていきました。
未来は誰にとっても不確実
新たな技術の進化によって、それまで存在していた仕事がなくなり、そして街の風景が変わる。同じような状況が再びやってこようとしています。そのような未来に向けた教育について、社会はどのように向き合っているのでしょうか。
「未来は不確実だ。そしてまだどのように変化していくのか予想だにつかない。しかし、我々は、そのことに対してオープンであり、そして準備する必要がある。この時点で、予想さえできない課題を解決するために、まだ生まれてもいない仕事、まだ発明もされていないテクノロジーに対して、学校(教育機関)には、準備できる可能性がある、それが教育に携わるものが果たすべき、共有すべき責任だ。」
出所:The Future of Education and Skills – Education 2030, issued in 2018 by OECD, 翻訳
世界レベルで起きうる課題に取り組む、OECD(経済協力開発機構)のメッセージです。これが今現在、日本だけでなく、世界レベルの組織が捉えている「学校(教育機関)が置かれている現実」です。未来が、いかに誰にとっても不確実なものであるか、認識いただけたでしょうか。
「いい学校に入りさえすれば幸せになれる」という幻想
教育資金は非常に大切です。しかし、「教育投資を貯めて、いい高校、いい大学、そして大企業に入れさえすれば、子供には幸せな人生が待っている」という幻想に、まだどこかで引きずられていませんか。インデックス型投資信託のような商品に積立投資をして、ほったらかしておけば、想定通りのローリスクで安定した投資利益が享受できる、そんな教育を探そうとしていませんか。
第2回では、子どもを待ち受ける不確実な未来に対して、世界と日本の教育がどのように課題を捉え、どのように立ち向かおうとしているのかをお伝えします。