新時代のノウハウ継承とは?

 自動車業界に代表される日本のメーカーは、これまでのノウハウが通用しない場面に直面しています。デジタル化やIoT技術の進歩で、メーカーの工場ではオートメーション化が進んでいます。また、AIによるビッグデータ解析は様々な可能性を秘めています。単にものづくりだけをしていた局面から、新たな技術への対応に迫られています。日本メーカーが持続的成長を遂げるには、これまでの優れたノウハウと新たな知識が融合することが不可欠です。いま多くの日本企業では、積極的にAI人材やデジタル人材を採用しはじめています。しかし新たな専門知識を持つ人材をただ採用するだけではうまくいかないでしょう。なぜなら、知識を使いこなすには考え方やイメージが大事だからです。

 では、どうすればよいのでしょうか。日本企業は、かつてのように社内に積極的に「対話の場」を用意するべきでしょう。対話を通じてのみ「暗黙知」は共有されます。そして対話は、ベテラン社員と若手社員に、外部の識者や異業種から中途で入った社員など、新たな知識を持つ人材が加わり、互いに知恵を絞る場をつくるべきでしょう。

 こうすることで、今までのノウハウが若手に吸収され、さらに新たな知識と融合させることができます。これからの人事は、単なる採用や育成ではなく、ノウハウが継承され、そこからさらに新たな知識が生まれる対話の場づくりを積極的に行うべきなのです。もう一度、日本企業が世界を席巻するには、欧米の真似をやめ、かつてのノウハウ創造のやり方を新たな形式で蘇らせることが必要ではないでしょうか。

【参考】経済産業省:変革の時代における人材競争力強化のための9つの提言

著者プロフィール
 

中野 在人

東証一部上場大手メーカーの現役人事担当者。
 

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。
 

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。
 

個人でHRメディア「HR GATE」を運営中。
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