経済界で何かと話題を振りまく「楽天」がプロ野球界でも今オフ、台風の目になっている。東北楽天ゴールデンイーグルスだ。とにかくストーブリーグでは積極的に動いている。
大型補強の指揮を執る「豪腕」石井一久GM
千葉ロッテマリーンズから国内FA権を行使した鈴木大地内野手、金銭トレードで涌井秀章投手を獲得。今季先発ローテの柱となって8勝をマークした美馬学投手が国内FAでロッテへ移籍したため、その人的補償として通算成績88試合、12勝11敗の酒居知史投手もチョイスした。
逆に楽天からロッテには美馬だけでなく、鈴木の人的補償で小野郁投手、自由契約となっていたリリーバーのフランク・ハーマン投手と西巻賢二内野手が移籍。実質的にロッテ側と〝3対4のトレード〟が成立する形になった。
ちなみにこれは余談だが、鈴木と美馬については巨人も獲得に動いていた。しかし球団内の造反者があろうことか外部のラインを使って美馬ら該当選手側にあえて不利な情報を流していた疑いが強まるなど巨人はFA戦線から大きく後退。結果として、この巨人の内ゲバまがいの自滅にも助けられ、楽天はロッテとともにストーブリーグで「ウィン・ウィン」となり〝Gを出し抜いて戦力補強に成功した球団〟として脚光を浴びる形になった。
ただ、インパクトとしては一気に大物2人の獲得に成功した楽天のほうが大きい。楽天が鈴木と締結した4年契約の年俸総額はインセンティブ込みで推定7億円だ。これまで遊撃手部門でベストナイン2回、二塁手部門でもゴールデングラブ賞に輝くなど鈴木の守備力は確かにお墨付きである。内外野で複数のポジションをこなせるユーティリティー性とともに、シュアな打撃も評価が高い。今季はロッテで選手会長を務め人望も厚く、三拍子どころか四拍子揃っている感のある鈴木は楽天としても大枚をはたいてでも是が非でも獲得したかった。
そして何と言っても驚かされたのは、金銭トレードによって新たな戦力とした涌井の獲得である。「鈴木獲得の人的補償を楽天から求められる際のプロテクリストから外れるのではないか」との見方もあったが、結局は意外な形で新天地への移籍が決まった。