烏森神社 撮影/みかめ ゆきよみ

(みかめ ゆきよみ:ライター・漫画家)

 新年の初詣はもちろん、仕事の休憩時間に、打ち合わせの合間に。知っていれば立ち寄れる、東京のビジネス街にある神社を厳選してご紹介します。仕事運アップのご利益にあやかりながら、歴史散歩として楽しんでみてはいかがでしょう。

新橋・烏森神社:明暦の大火を耐えた稲荷社

 サラリーマンの街・新橋駅から徒歩5分の好立地にある烏森神社。新橋駅の「烏森口」はまさにこの神社が由来です。祭神は倉稲魂命(うがのみたまのみこと)で、「稲荷さま」といえば馴染みが深いでしょう。稲荷社は最も多いと言われており、屋敷神として自宅の敷地内に祀っているケースも非常に多いです。穀物・食物の神といわれ、五穀豊穣や諸産業繁盛にご利益があります。

 烏森神社は平安時代に平将門の討伐を遂行した鎮守府将軍・藤原秀郷にゆかりがあります。藤原秀郷は将門討伐の際、とある稲荷神社の白狐から白羽の矢を与えられ、これをもって無事に乱を平定することができました。秀郷がそのお礼として一社勧請しようとしたところ、夢に白狐が現れて「烏の群がる所が霊地である」と告げました。そこで秀郷はふさわしい地を探して、烏森にたどり着き、ここが霊地であると定め烏森神社を建てたといいます。

前の込み入った路地にあります。喧騒が嘘のように鎮まり、ここだけ別空間のようです。 撮影/みかめ ゆきよみ

 江戸時代に起こった明暦の大火では烏森稲荷社だけ類焼を免れました。武人藤原秀郷に力を与え、業火をはねのけるその神威にあやかりたいものです。

赤坂・日枝神社:将軍が崇敬した江戸の鎮守

日枝神社 撮影/みかめ ゆきよみ

 東京都永田町にある日枝神社は政治の中心地にあり政界からの信仰も厚く、パワースポットとして有名です。祭神は大山咋神 (おおやまくいのかみ) 。滋賀県比叡山(日枝山)に坐した地主神です。

 大山咋神は山と水を司り、農耕の神様として信奉されていました。万物の成長・発展の利益が転じ、現在では縁結び、商売繁盛、社運隆昌などの神として信奉されています。

 日枝神社は太田道灌が河越(埼玉県川越市)の日枝神社を勧請したのが始まりと言われています。徳川家康が江戸に移封されると、日枝神社は江戸城の鎮守として崇敬されました。江戸城の改築移転や焼失などの憂き目に遭い、何度かの移転をして現在の場所に遷座されました。その間も徳川歴代将軍と江戸の民衆に手厚く崇敬されてきました。

日枝神社で見られる猿の木像。撮影/みかめ ゆきよみ

 日枝神社では境内の至る所に「猿」を見ることができます。猿は大山咋神の使いの神でもあり、災いが去る(さる)ということで厄よけの神としても親しまれています。また、「猿」という字が「縁」に似ていることから縁結びの神様としても有名。そのため日枝神社で結婚式を挙げるカップルも非常に多いとのこと。もちろん仕事の「縁」も運んでくれるでしょう。