現在の「金融政策」は、お金の将来価値を低下させる
現在の金融政策の目的とは「インフレ目標」、つまり、物価上昇を起こすことです。適度なインフレは経済活動を刺激しますので、これは政府の政策として当然、求められていることです。ただ、「金融緩和」の本質とは将来価値の保全目的で保有しているお金の価値が意図的に棄損されている、という意識を高めないと日本国民はジリ貧に陥ります。
ぜひとも、お金(現金・預金・貯金)にはリスクがあるということを覚えていただきたいです。リスクの正確な定義は「危険」ではありません。「不確実性」です。金利が0%の状態では、適度なインフレでも現預貯金の価値が下がるのというのに、仮にコントロール不能な過度なインフレになったら、日本人の生活が窮地に立たされます。必ずそうなると言っているのではありません。確実ならば、「リスク」にはなりませんから。ただ、そうなる可能性を100%排除できないのであれば、不確実性は否定できなく、現預貯金には「リスク」が生じているのです。
異次元な金融政策が6年間も実施されているのに、日本人が保有する現預金は増え続け、2018年末現在、984兆円を抱えています。そのうち、約50兆円が銀行預金や郵便貯金に預けていない、「タンス預金」であると推測されています。一万円札を一枚ずつ重ねた場合、1兆円分の高さはおよそ10㎞。その巨大な一万円札のタワーが984本、その内、50本が全国の家庭のタンスに入っていて経済活動に全く参加していないのです。
およそ5年後、新しい紙幣が日本社会で流通するときに一万円札の肖像になっている渋沢栄一は声を上げるでしょう。「ワシは暗い所が嫌いじゃ。タンスの中へ放りっぱなしにしないでおくれ!」と。