30年前の1989年11月9日夜、ベルリンの国境が開いた。
ブランデンブルク門近くの壁を東ベルリン市民がよじ登る。駆けつけた西ベルリン市民たちも加わり壁の上で列をなし喜びを分かち合う。
ハンマーで、ノミで、壁を壊す・・・。
「ベルリンの壁崩壊」の劇的映像は世界中で流れた。そして、いまも「冷戦終結」という歴史のヘッドラインとして引用され続ける。
冷戦の象徴の崩壊とともに東西対立の構図も急速に崩れ、翌12月初め、ロナルド・レーガン米大統領とミハエル・ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長がマルタで会談、40年以上続いた冷戦の終結が宣言された。
東側諸国は資本主義、自由民主主義へと向かい、翌年10月にはドイツ再統一、21世紀初めにかけ続々とNATO(北大西洋条約機構)、EUに加盟、欧州はボーダレス時代へとつき進んだ。
そんな時代の象徴としてのベルリンの壁、そしてベルリンの街の歩んできた道を、様々な視点で見せる映画とともに、たどってみることにしよう。
「壁って、どこにあるんだ」
「バカだなあ、ベルリンだよ」
「ベルリンは分かるさ。どこの国なんだ」
「ドイツ、西ドイツだ」
「俺たちがいるのは西ドイツか?東ドイツか?」
「東だ」
「西だろ、アホ」
「何が違うんだ」
「そんなこと知るか」
「壁崩壊」を伝えるニュース番組を見ながら、こんな会話をしているのは『戦争のはじめかた』(2001)の西ドイツ、シュトゥットガルト駐留の米軍兵士たち。
冷戦初期の朝鮮戦争での米兵を描いた傑作『M★A★S★Hマッシュ』(1970)同様のブラックな笑いに満ちた冷戦末期の物語の空気を、開巻早々、主人公のモノローグが語る。