流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント/作家 前田 康二郎
 
HRプロ最近、「職場の仲の良さ」が職場環境のトレンドとして話題になります。そこで、前回は「社員同士の仲が良ければ利益は上がるのか」をテーマにお届けしました。今回は反対に、「社員同士の仲が良くない場合」に起こる弊害と、その解決策ついて考えていきたいと思います。

>>第2回:仲が良い会社=売上が伸びる会社にあらず、「なれ合い」と「助け合い」の違いを見極めよう

個人的な感情で情報を隠す社員は、会社にとっても損失をもたらす

「仲の悪さ」も、仲の良さと同様に「質とレベル」があります。「理想の製品やサービスはこうあるべき」といった、会議などで製品や会社がより良くなるために交わされる、レベルの高い意見のぶつかり合いから、単なる嫉妬や、「生理的に口もききたくない」といった質の低いものまでさまざまです。そして利益という側面から見ると、これらには大きな違いがみられます。

 前者の場合は、仲が良くないといっても、お互いに「自分が最高の案を出している」という自負のもとにぶつかっているわけですから、そこに個人的悪意があるわけではありませんし、会社に損失をもたらす仲たがいではありません。情報も最低限の部分は互いにオープンであることでしょう。

 ところが、後者の場合は違います。個人的感情での不仲の最終目的は、ただ一つ「相手を消す」ということです。その人が「仕事で失敗」することを望みます。そのために行う手段の一番の典型が、その人が知っておかなければいけない情報をわざと知らせなかったり、嘘をついて偽の情報を流したり、といった「情報の遮断」という行為に出ることです。

 なぜ「情報の遮断」を行うのか。その理由は、それが「有効かつ効果的」だからです。正しい情報を伝えないことで、多くの社員は「ほぼ自動的に」ミスをします。そして会社に損失をもたらし、その責任をとらされて失脚する、という流れにつながります。確実にそうなることがわかっているので、「情報の遮断」をしたがるのです。このように考えると、「正しい情報をタイムリーに得る」ということがいかに大切かおわかりいただけるのではないでしょうか。

 また、「経営」という一段高い位置からその争いの様子を見てみると、前者の「フェアな争い」は、競い合いの結果、会社そのものが上昇スパイラルに入ります。むしろ歓迎すべきことで、両者を讃えてもよい位です。しかし、後者の「情報を遮断する社員」というのは、単に会社に損失をもたらす「赤字社員」に過ぎません。どのような理由があろうとも、会社側は情報を遮断した社員を放置せず、指導する必要があります。「単なる痴話げんかでしょう」と放置しておくと、こうした社員は生理的に気に入らない社員がいる度にその手法を繰り返します。そして、結果として対外的な会社の評価を下げ、徐々に赤字へと導いてしまいます。このような社員が一旦社内に居座ってしまうと、なかなか数字の改善はできなくなります。

 このように、「会社に損失をもたらす行動をとってしまう社員」をマネジメントすることも、会社経営にとっては非常に大切なことであり、「利益を下げない組織」にするために重要なポイントになります。