フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏ルノーの統合プランが白紙撤回された。主導権の維持に固執したルノー筆頭株主のフランス政府が条件に難色を示したことが原因とされる。世界が驚いた統合プランはあっけなく破談となったが、今回の出来事は、やがて自動車業界に到来する大規模再編劇の号砲となる可能性が高い。(加谷 珪一:経済評論家)
日産は統合案ついて棄権する意思を表明
欧州と米国を拠点とする自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は2019年5月27日、ルノーに対して経営統合を提案したことを明らかにした。両社の株主が50%ずつ出資した新会社をオランダに新設し、株式は米国など複数国で上場するプランだった。
FCAは2014年にイタリアのフィアットと米クライスラーの合併で誕生した会社で、北米では「ジープ」ブランドが、欧州では「アルファロメオ」「マセラティ」といったブランドが有名である。
ルノー・日産連合の2018年の販売台数は1075万台で世界2位となっており、FCAは484万台を生産している。単純に各社の販売台数を足し合わせると1559万台になるので、もし統合が実現すれば、現在、首位の独フォルクスワーゲン(1083万台)を大きく引き離し、圧倒的なトップ企業となる。
だが、この数字はあくまでもルノーと日産が一体であることを前提にしたものである。今回の提案はあくまでルノーとFCAの統合であり、そのスキームの中で日産がどう位置付けられるのかは微妙な状況だった。
2018年におけるルノー単体の販売台数は388万台、日産は565万台と日産の方が多い。日産は経営危機をきっかけにルノーの傘下に入ったので、資本構成上、日産はルノーの子会社である。表面上、ルノーが対等な関係を演出してきたのは、販売台数では日産の方が上回っていたからだ。