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 日本から外国人が撤退を始めた。ドイツの航空会社、ルフトハンザ航空は成田空港への発着を当面見合わせることを決めた。日本発着便は当面、関西空港や中部空港へ振り替えるという。また、フランスのある大手企業は日本駐在員を本国へ呼び戻した。

横浜は危ない、神戸に向かえ

 こうした動きは今後、ますます活発になると見られる。原因は福島第一原発の事故である。放射能汚染がどれほど広がるか分からない地域に大切な社員を派遣できないというわけだ。

 米国のある大手食品メーカーは、本来の入港先である横浜港を突如変更、神戸港に行き先を変えたという。これはその米メーカーから食料品を輸入している企業から聞いた確かな話だ。福島から数百キロ離れた横浜でも安心できないということらしい。

 同様のケースは日本企業の間でも始まっている。ある日本の大手食品メーカーは、茨城県にあるレストランへ食材の搬入拒否を伝えてきたという。福島県に隣接する県というのがその理由である。

 枝野幸男官房長官は、こうした事態について「明らかな過剰反応であり、福島第一原発から半径30キロメートルを超える地域では直ちに人体に影響を与えるような放射能を浴びることはない」と、3月16日午後6時からの記者会見で述べた。

 恐らく、それは正しい。しかし、放射能という目に見えない危険に対する恐怖は簡単に拭えない。そしてそれ以上に、政府の対応に対する不信感がこうした行動の背景にあるのは確かだろう。

自衛隊のヘリコプターは上空からの放水を断念

 福島第一原発の事故に対する対応が後手後手に回り、事態は深刻の度合いを増している。16日には水素爆発を起こした福島第一原発3号機の上空から自衛隊のヘリを使って水を供給する予定だったが、放射能のレベルが規定値を超えていたため、断念せざるを得なかった。

 事態は深刻になる一方で、改善の様子は全く見えない。事故発生の初期段階から情報を隠蔽し、責任をなすりつけ合うような形で、先手先手で対策を打てなかった東電と政府の責任は重い。

 なぜ初期段階から事態の深刻さを公表し、日本の総力を挙げて取り組まなかったのか。異常事態宣言をして、万難を排した対策が必要だったのではないか。

 時間が経てば経つほど事態が悪化すれば、日本国民だけでなく世界中の人たちが心配になるのは当然だ。人間の心理とはそういうものだろう。