制作費が切り詰められてきたとはいえ、まだまだ大きな予算を投じて作られているのがテレビ業界の映像コンテンツ。それが、低予算のSNS動画に押されている理由はいったいどこにあるのか? 田原総一郎氏と明石ガクト氏の対談第二弾をお届けする。(構成:阿部 崇、撮影:NOJYO<高木俊幸写真事務所>)
(その1)「テレビを見ない若者がスマホの動画には食いつく理由」はこちら
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55897
スマホ向けの動画はラジオに近い
田原総一郎氏(以下、田原) 「今の若者はテレビを見ない、YouTubeばっかり見ている」って言われるけど、本当にそうなのかな?
明石ガクト氏(以下、明石) 中高生ぐらいになると、YouTubeでしょうね。
田原 テレビは見ないで?
明石 ええ。
田原 実は中学生になる僕の孫も、YouTubeばっかり見てんだよね。それでテレビは全然見ない。テレビって若者にとってそんなにつまらなくなったのかな。
明石 おそらくですが、お孫さんの趣味嗜好にものすごいフィットしたコンテンツに夢中になっているんじゃないですか。
僕はレキシっていうアーティストが好きなんです。でも彼のファンというのは、例えばAKB48のファンほどは多くない。
そこでテレビの論理で言えば、金曜日のゴールデンタイム、7時から9時の番組で「AKB48とレキシ、どっちを流す」って考えたら、そりゃ、AKBを流すんですよ。たくさんの人がテレビを見る可能性がある時間帯だったら、ニッチな層にしか受けないものよりもメジャーなものを優先する。テレビのコンテンツってそうやってできてるんです。新聞も基本的には同じですよね。紙面には限りがあって、そこに盛り込める記事をどれにしようかと考えたら、それは需要が多そうなものを選んで載せていくわけです。
でもネットって、アップロードするコンテンツの量に上限はありません。だから、「日本の中で1万人しか熱狂しない」みたいなものでもアップできるし、それがちゃんとビジネスになるんです。テレビだったら1万人に向けた番組は絶対にペイしません。
YouTubeがもたらした変革ってのは、そこだと思っているんです。個人が動画を上げて、それが好きな個人と結びつく。
田原 明石さんはYouTubeで動画を流しているわけじゃないんでしょう。どういうものを作って、どういう仕組みで儲けているんですか?
明石 僕のONE MEDIAっていう会社は、自分たちで作った動画を、FacebookとかインスタグラムといったいろんなSNSで配信しています。そこに対していろんなクライアントからスポンサードをもらう。テレビ局が、スポンサーに番組を提供してもらうみたいな感じです。そういう会社です。