2月27日、28日、ベトナムの首都ハノイで、2回目の米朝首脳会談が行われる。何が期待できるのか? どこに注目したらいいのか? 会談の前にポイントを整理してまとめてみた。(軍事ジャーナリスト:黒井 文太郎)
米国が得たメリットとデメリット
まず、米朝関係の現状はどうなっているのか? 昨年(2018年)6月の1回目の米朝会談を経て、米朝双方は、どんなメリットを得たのかをみてみたい。
米国側の最大のメリットは、北朝鮮の新規の核起爆とミサイル発射の実験を停止させることができたことだ。なかでもミサイルは、北朝鮮はアメリカ東海岸まで射程に収めるICBM「火星15」の発射実験まで成功させていたが、実用化して実戦配備するには、北朝鮮としてはさらに実験を重ねたいところだったはずだ。
ただし、それが実用化されれば、米国の安全保障には致命的な弱点が生じる。米国とすれば、それを阻止するために、危険な戦争も検討せざるを得なくなる。それは米国としても、リスクがきわめて高い。だから、北朝鮮がたとえ水面下で技術開発を継続していようと、実験の停止はメリットとなる。緊張をとりあえず緩和し、戦争の危機を当面回避したことも、短期的にはメリットだ。
また、米国にとってということとは別種の話だが、トランプ大統領個人にとっては、「自分はオバマ前大統領などには不可能だったことをやってみせた」という政治的パフォーマンスもメリットといえる。
逆にデメリットとしては、これは緊張緩和・戦争回避と表裏の関係になるが、北朝鮮に核廃棄を迫る軍事的圧力も緩和されたということがある。いわば北朝鮮の核温存の可能性への道を開いたともいえるわけだ。
実際、トランプ大統領の指示によって、米韓軍事演習の一部が中止された。北朝鮮に対する米軍の軍事的な抑止力はまだまだ圧倒的ではあるが、圧力の低減となることは確かである。