はじめに

 現在、RMA(Revolution in military affairs)―いわゆる軍事革命―が欧米社会を中心に吹き荒れている。

 1991年、米国が主導し多国籍軍で戦われた湾岸戦争は、RMAの萌芽を世界各国に知らしめたが、爾来20年、21世紀に突入した現在、RMAの嵐はいよいよその高潮期に入っていると言っても過言ではない。

 そしてまた、RMAの主体がコンピューターやインターネットであるがゆえに、サイバー戦という新たな形態の戦闘も考慮しなければならなくなっている。

 この間、我が国の防衛および安全保障に関わる分野においては、国際貢献のあり方やその法制の整備・実行と教訓に基づく法制・体制・態勢の見直し、国民保護法を含む有事関連法の制定、あるいは海賊対処法の制定などに力を割いてきた。

 さらには防衛庁の省への昇格、統合幕僚監部の発足など、新たな枠組みの構築に努力を傾注することとなった。

 特に軍事技術分野では、日本の得意とするITの応用とこれを利用する新しい戦術の開発については世界に遥かな後れを取ってしまった。

 その結果、我が国はRMAに十分対応できる状況ではなかった。

 こうした状況をさらに悪化させたのは、我が国の政界における大変革であり、その余韻は2010年を過ぎた現在にあってもいまだに続いている。

 本来、自由と民主主義を標榜しつつ社会の成熟段階に入っている我が国においては、国家防衛や安全保障にかかる政策について与野党間に基本的な相違が存在することはあってはならないはずなのである。

 しかし、我が国は、第2次世界大戦における敗戦の影響・後遺症が65年以上も経過しているのに払拭されないでいる。

 本稿はこうした前提を踏まえ、現在進行中の「軍事革命」の実態について述べるとともに、それが及ぼす社会への影響について論を進めることとする。