アマゾンは「ビッグブラザー」? 電子書籍を無断で遠隔削除

アマゾンCEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾス氏〔AFPBB News

 米アマゾン・ドット・コムが映画などの映像コンテンツの配信サービスで攻勢をかけている。同社は2月22日、米国で提供している商品配送優遇プログラムの会員に対して追加料金なしで映像コンテンツのサービスを提供すると発表した。

 同社には「アマゾン・インスタント・ビデオ」というサービスがあり、映画やテレビ番組など約9000作品を用意し、レンタルや売り切りといった形で提供している。

 料金は映画のレンタルの場合で1作品1~5ドル程度、売り切りの場合で10~15ドル程度。前者は作品ごとに異なるがおおむね1日~数日間のレンタル期間を設けており、後者には視聴期限がなく複数の機器で視聴できるという違いがある。

 商品配送優遇プログラムの会員には、このうちの約5000作品を追加料金なしで楽しめるようにする。コンテンツはパソコンのウェブブラウザーのほか、テレビや、セットトップボックス(STB)、プルーレイディスクプレーヤーなど約200機種のインターネット接続可能な対応機器で視聴できるが、現時点では作品のダウンロードはできず、すべてストリーミング配信となる。

 つまりネットにつながった状態でなければ利用できないなど制約はあるが、アマゾン・インスタント・ビデオとは違って見放題のサービスであるため、この分野で大手の米ネットフリックス(Netflix)に直接対抗するサービスになると米ウォールストリート・ジャーナルなどのメディアは報じている。

ネットフリックスよりも年間17ドル安く

 アマゾンが米国で提供している商品配送優遇プログラム「アマゾンプライム」は、注文日の翌々日までに品物が届く「急ぎ便」を無制限で利用できるというもので、年会費は79ドルになる。これに対し、ネットフリックスの映画配信サービスは月額7.99ドル。つまりアマゾンのサービスはネット通販配送サービスのメリットを差し引いても、ネットフリックスより年間約17ドル安いことになる。

 商品の配送優遇プログラムと映画ネット配信とは奇妙な組み合わせだが、アマゾンによるとその狙いは、オンライン小売りとデジタルコンテンツ事業の両方を強化することにあるという。

 同社は、「アマゾンプライムの会員は、非会員の顧客よりも頻繁に買い物する傾向にある」と説明しており、映画配信サービスに魅力を感じ、このプログラムの会員が増えれば、小売りの売上増にもつながると期待を寄せている。