しかし、旅客機であるMC-21が潰されるような制裁が発動されたことで、こうした協力関係は困難になった。民間のビジネスでもいつどこでどのような制裁が始まるか分からないからだ。

 米国商務省が発表した制裁の理由は、上記の3社が軍事的なロシアの航空宇宙プロジェクトに関わっているからだとしている。

 しかし、MC-21は旅客機である。テフノロギヤ社とアヴィアドヴィガーチェリ社は軍用機の仕事もするが、民間機関連の部分だけ独立させることは可能であろう。

 アエロコンポジット社は100%民需の会社であり、そもそもVaRTM法の技術は軍用機に適さない。

 にもかかわらず、ロシアの航空関係者が苦労して開発してきたMC-21が、政治に巻き込まれて潰されてしまうのは、あまりに気の毒である。ものづくりに関わったことがある人であれば、皆そう感じるのではないか。

 こうした制裁では米国の産業界も売り上げが減るし、仮にロシアが反撃してくれば、ボーイングも無傷ではすまない。

 ロシア製材料を代替できても時間がかかり、コストもアップする。さらに、そんなことになれば、そのとばっちりはボーイング向けの仕事をしている日本メーカーにも及ぶ。

 刻々とソフトランディングが難しい雰囲気になりつつあるが、できれば元の場所に収まってほしいと願っている。