まだ2カ月も経ていない2011年のロシアだが、その間の大きなニュースを1つ選ぶとなれば、石油大手の英BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)とロシア最大の原油生産会社であるロスネフチとの株式交換合意が挙がるだろう。
メキシコ湾で泣いたBPがロシアで起死回生の一手
ロシアにとっては、日本の前原誠司外相の訪ロよりもどうやらインパクトがあったようである。はなはだ残念なことではあるが。
1月14日に両社が発表したその内容とは、市場価額で78億ドルと評価されるBPの株式5%とロスネフチの9.5%を交換し、そのうえで北極海のオフショア開発のための合弁企業(ロスネフチ67%、BP 33%)を設立しようというものだった。
これが実現すれば、BPはそれまでの買収分と合わせロスネフチの10.79%を保有する同社筆頭株主へ、またロスネフチもBPの第2位の単独株主となる。
BPと言えば、昨年米国のメキシコ湾での石油生産で事故を起こし、流出した大量の原油の処理や賠償で2010年は18年振りの赤字決算となった。
さらに今後被害への500億~600億ドルの追加賠償の可能性も残っている。この事故で同社の時価総額は一時500億ドル以上も下落した。その後遺症がまだ冷めやらぬこの時期でのロスネフチとの合意であるから、起死回生をロシアに求めたとも評される。
英国の企業はロシア企業以上にロシア的だった?
確かにBPは、事故の処理費用や賠償金に充てるために大量の資産売却を行ったが、ロシアとアゼルバイジャンの権益は手放さなかった。そのロシアの権益とは、別のロシアの石油企業・TNK(チュメニ石油会社)との対等合弁企業・TNK-BPの持分である。
その持分約50%を通じての合弁からの配当金やBP本体に計上できる資源埋蔵量は、同社の経営や株価をこれまで大いに助けてきた。恐らくBPが手がけた海外投資の中でも、最も成功したものの1つと言える。
そんな宜しいお相手がいながら、今度はロスネフチである。TNK-BPのロシアのパートナー(後述のAAR連合)にしてみれば、黙ってはいられないのも当然だろう。
自分たちをさしおいて浮気などとはとんでもない話である。英エコノミスト誌は皮肉たっぷりに書く――「ロシア企業以上にロシア的なことをするなんて」と彼らは憤慨して述べた――と。