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東京地裁、ゴーン容疑者の勾留認める 来年1月1日まで

横浜の日産本社で記者会見に臨む、前会長のカルロス・ゴーン容疑者(2012年5月11日撮影)。(c)AFP/Toru YAMANAKA〔AFPBB News

(文:磯山友幸)

 東京地検特捜部は身柄を勾留中だった日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者を、12月21日に特別背任容疑で再々逮捕した。

 ゴーン容疑者は金融商品取引法違反の有価証券虚偽記載罪で12月10日に再逮捕されており、12月20日が勾留期限だった。特捜部は金商法違反での10日間の勾留延長を請求していたが、20日に裁判所がそれを却下、ゴーン容疑者が保釈申請する見通しで、21日にも拘置所から出ることが予想された。特捜部が新たな容疑でゴーン容疑者を逮捕したことにより、当面、10日間の身柄拘束がされ、再度の勾留延長申請で、年明けまでゴーン容疑者は拘置所住まいを余儀なくされる見通しとなった。

胸三寸で「活用」できる罪状になってしまった

 特捜部の勾留延長請求を裁判所が認めなかったのは極めて異例だ。日本では容疑を否認する容疑者に対して再逮捕を繰り返し、長期にわたって取り調べを続けることが、普通に行われている。最近では森友学園による補助金詐欺容疑で、籠池泰典夫妻が約10カ月にわたって勾留された。

 裁判所が延長を認めなかった理由は明らかではないが、有価証券虚偽記載罪での再逮捕と長期勾留に無理があると判断したのだろう。ゴーン容疑者は、本来は報酬として確定していたものを記載せず、報酬を低く見せていたとして、有価証券虚偽記載罪で11月19日に腹心の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者と共に逮捕された。もっとも、逮捕直後から、報酬の未記載を理由に身柄を取ったことに、かなりの無理があるとの指摘が司法関係者からも出ていた。

 最初の逮捕と、その後の10日間の勾留延長については、金商法違反を突破口として使うのも致し方ない、というムードもあった。ところが勾留期限の12月10日に同じ容疑で再逮捕したことには、「危うさ」が見えた。そうでなくても日本型の司法のあり方について、国際的な批判が懸念されている。虚偽記載を記載年限で分割することで「別の事件」として再逮捕し、勾留を引き延ばしたことに、海外メディアなどは批判的な論調をとっていた。勾留延長に裁判所がNOを突き付けたのも、「ある意味当然」という声が出ている。

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