閉局前に宮戸島へ向かう

水曜日にはこちらの画面が表示される(閉局前のもの)

「トンネルをぬけると、そこには水曜日がありました。」のサブタイトル通り、真っ暗なトンネルの出口には陽光が降り注ぎ、生い茂る樹木の緑がきらめいている。このトンネルの向こうに、鮫ヶ浦水曜日郵便局があるらしい。

 メインである郵便局の建物写真を使わずに、なぜこのトンネルの写真を使ったのか。本プロジェクト代表、鮫ヶ浦水曜日郵便局局長の遠山昇司氏によると、「全国の候補地をめぐる中でこのトンネルに出会い、頭から離れなくなった」という。どうやら私も何か同じものを感じてしまったようだ。

 聞けば開局から1年を迎える2018年12月5日(もちろん水曜日)で、当初の予定通り郵便局を閉局するとのこと。目指すは手紙の送付先である「宮城県東松島市宮戸字観音山5番地その先」。その先にある何かを知るために、現地に行かなければいけない。理由はわからないが、そう強く思った。

 郵便局があるのは宮城県東松島市。松島湾の東端に位置する宮戸島にある。島に行くバスはないので、郵便局へはJR仙石線の野蒜(のびる)駅からタクシーを使う。野蒜駅は、東日本大震災で駅を通過したばかりの上下線車両がともに被災し、その映像とともに報道されたので記憶に残っている方もあるだろう。新しい野蒜駅は500m離れた内陸側に移転し、旧野蒜駅は2016年10月に震災復興伝承館として改修されている。

 宮戸島は砂州によってほぼ陸続きになっている「陸繋島」であり、50m弱しかない松ヶ島橋で島に渡ることができる。震災による津波で松ヶ島橋は流されてしまったため現在は仮橋だが、すぐ隣には立派な橋脚ができあがっていた。道中のあちこちで護岸工事や設備工事が行われており、居住が制限されているため一帯が広大なすすき野原と化している。震災から7年半が経っているが、復興への道のりは長いことを実感した。

鮫ヶ浦水曜日郵便局は宮戸島の北東に位置している(Googleマップより)

 島を南下し、Uの字を描くように少し北東に戻ると多くの小型ボートが係留されている潜ケ浦(かつぎがうら)の入り江につく。ここからはタクシーを降りて徒歩である。潜ケ浦を左手に見て、右方向の細い道が例のトンネルに続く道だ。