論文の内容は安倍政権への激烈な批判であり、非難である。最大の主張をまとめると、以下のようになる。
「安倍晋三首相は、米国政府が中国の無法な膨張を抑えようと対決の姿勢を強めているときに中国に友好を求め、日米同盟やトランプ大統領に大きな害を与えている」
さらにフィトン氏は、安倍政権の対中外交が日本にも被害をもたらし、失敗するとも予測していた。
中国の対日政策の実態は変わらない
同論文は副題で「米国が中国の貿易問題や南シナ海での威嚇を抑え始めたときに、日本政府はなぜ中国に融和的な接近をするのか」という問いを投げかけ、安倍政権の最近の中国への接近を辛辣に批判していた。
論文の要旨は以下のとおりである。
・安倍首相は10月下旬の訪中で、中国との絆を経済からスポーツまで広げることを宣言し、「一帯一路」関連のインフラ事業への参加を言明した。だが、この動きは同首相が友人と呼ぶトランプ大統領の対中政策への障害となる。
・ペンス副大統領の10月4日の主要演説が明示するように、米国政府は対中政策を歴史的に変革し、融和から対決へと変更した。しかしこの時期に安倍首相は日中関係を「競争から協調へ」とまさに逆行させ、中国の不公正貿易慣行を正す米国の関税制裁の効果を減じるような動きをみせた。
・トランプ政権は、同盟諸国が米国と貿易問題での協定を結びながら一方で中国との協定的な合意を結ぶことに反発する。トランプ政権は最近メキシコおよびカナダとの間で新北米自由貿易協定をまとめたが、メキシコとカナダが中国のような非市場経済国家と独自の貿易協定を結ぶことに反対している。
・日本の新たな対中政策がこのまま進み、米中貿易紛争で中国を利すことになれば、トランプ政権は日本との貿易交渉で自動車関税などの対日圧力措置をとり、防衛面でも日本の防衛費のGDP(国内総生産)1%以下という低水準への不満を表明することになるだろう。安倍首相はトランプ大統領を友人と呼べなくなる事態も起きるだろう。