(文:平井久志)
韓国の大法院(日本の最高裁判所に該当)は2018年10月30日、日本の植民地支配の時期に日本本土の工場で強制労働をさせられたとする元徴用工4人が、新日鐵住金を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、控訴審判決を支持して同社の上告を退け、1人当たり1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じた。
安倍晋三首相は「本件については、1965年の日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決している。今般の判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ。日本政府として毅然と対応していく」と語った。
日本国内では韓国への強い批判が起き、日韓関係の基盤を揺るがしかねない判決という指摘が出ている。韓国では日本企業を相手取って同様の訴訟が10件以上起きており、今後、相次いで原告勝訴の判決が出る可能性が高く、さらに新たに訴訟に踏み切る人たちが出てくる可能性もある。
だが、韓国内の状況を考えれば、この事態は韓国の大法院が2012年5月、それまでの元徴用工関連の判決を棄却して審理を高裁に差し戻した時点から、「十分にあり得る」判決であった。この大法院判決を受けて、2013年7月にソウル高裁が新日鐵住金に、釜山高裁が三菱重工業に、それぞれ原告勝訴の賠償命令を下したが、両社ともその後上告した。
韓国の最高裁はその後、審理、判決を先延ばしにしてきたが、2012年の大法院の判決を考えれば、判決の期日が決まれば原告側が勝訴することは確実と見られてきた。「その日」がやってきたということである。
本稿では、できるだけ冷静に、客観的に、この判決の問題点を考えてみたい。なぜなら、この判決自体が問題でも、日韓のこれまでの歴史的事実が変わるわけでもなく、韓国がどこかに引っ越すわけでもない。われわれはこの状況を踏まえてどのように日韓関係をつくっていくのかを考えなければならないからだ。
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