「俺たちは北朝鮮に食わせてもらってるんだ。向こうとの貿易がなければ、俺たち丹東市民の生活は成り立たない」
国境越しに北朝鮮を眺め、物足りなくなってきた
日頃から中朝間を合法的に往復し、両国貿易関係を推し進める丹東商人が筆者に語った。北朝鮮と隣接する国境都市丹東市。中国の対北朝鮮貿易の80%以上がここを通過する。
筆者も丹東に赴いたことがある。国境のシンボルとなっている鴨緑江の対岸を一日中ぼんやりと眺めていると、たまに北朝鮮の車が通っていたり人の影が見えたりして、感激させられた。
何しろ日朝間には国交がないわけで、たとえどれだけ限られていたとしても、北朝鮮を目の前で体験できるのは中国留学の醍醐味だと、漠然と思っていた。
何度か足を運ぶうちに、正直、物足りなくなってきた。あくまでも河ひとつ挟んでいるため、こちら側とあちら側の間には距離感がある。
現地の漁民にお願いして、北朝鮮の領土まで30メートルのあたりまでは接近したことがあるが、どうもパッとしない。あちら側の生活感が窺えない。
国境が奏でる真の国際関係
観覧車らしきもの、運転中止になっていると思われる工場、軽トラック、人影の無い道路、くらいしか見えない。
丹東が中朝間における合法的な貿易拠点になっている、という点も筆者にはお役所的過ぎる、建前に過ぎるように感じられた。
「中朝っていったら脱北に密輸だろ」
みたいな、こちらも漠然とした認識が筆者の脳裏にはあった。国境があるようでないような、政治関係とか経済統計などに左右されない、近くで遠い国境が奏でる真の国際関係を考えたい。自分が全く知らない、神秘的な北朝鮮を肌で感じてみたい。