「顧客の期待を超えるサービス」を実現したい、そのために新しいスキルを身につけたり、すでに持っているスキルに磨きをかけたい──そう考え実践しているスタッフが多いようだ。

戦略的副業解禁で本業のスキル向上

 そんなノバレーゼにとって好機到来と言えるのが、安倍政権下の「働き方改革」の目玉の1つ“副業解禁”のトレンドである。

 副業解禁をめぐっては、世の流れなので仕方なく導入する企業も多い。そうした企業では、「本業に差し障りがないか」などネガティブな捉え方に傾きがちで、それをどうプラスに活かしていくかという発想に欠けている。

 それに対して、荻野氏はいたってポジティブだ。「社内業務とは異なる経験が本業にプラスの影響を及ぼすことに期待しており、スタッフの可能性を開き、成長させる手段として解禁しています」。

 トップの姿勢が明快なので、社員も手を挙げやすい。すでに4件が承認されて走り出し、新たに4件の応募が加わった。当初は、料理人が料理教室を開いたり、ウエディングプランナーがフラワーアレンジメントの教室を主宰したりすることなどを想定していたが、実際はもっと多様なものとなった。

ノバレーゼにおける副業イメージ。ウェディングプランナーとして身に着けたフラワーアレンジメントの技術を活かして、教室を主宰する

「レストランの男性スタッフがクワガタのネット通販を始めました。実家でクワガタを販売しており、それをネット通販することでマネジメントスキルを身につけたいようです。

 また、ドレスケアスタッフをしている女性が、舞台衣装の制作・メンテ・着付けの仕事を始めています。大手劇団の衣装を扱っており、毎日舞台本番があるため傷みも激しく、そのメンテナンスをすることでスキルの幅がずいぶん広がるようです。

 さらには、ドレスショップの販売スタッフで、アパレルブランドを立ち上げた入社2年目の女性もいます。自ら買い付けをして、それをネットで販売するのですが、アパレル業界の動向とか市場ニーズの変化などを体感でき、流行の最先端に触れることでそれを本業に活かすことができるようです」(荻野氏)

 まさに「戦略的副業解禁」だが、リスクもある。「こうち食堂 日日是好日」を紹介した本コラム「二足の草鞋で食堂経営、姉妹が描く『その先』とは」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54084)で指摘したようにネガティブスピルオーバーの発生が懸念されるからだ。