刻まれた「練習ハ不可能ヲ可能ニスル」

 もちろん、その理由が意図されたものかといえば、それだけではないだろう。
 広島というセ・最西地に本拠地を置く地方球団ゆえ、関東や関西から指導者を招聘しにくい。他球団経験者を招いたときには、若手寮での単身赴任を強いられる。組閣を頻繁にいじれない環境にあるため、自然とコーチ歴は長くなった。

「純血主義」がいい、というわけでもない。ただ、「純血主義」だからこその恩恵もある。

 指導者が大きく入れ替わらないからこそ、チームとして目指す野球にブレがない。

「これまでの監督、コーチがしっかりと選手を育ててくれた。そういったベースに積み重ねてきたものがあって、今がある」

 現在指揮を執る緒方孝市監督はそう言い、歴代の指導者のスタイルを継承してきた。伝統的なスタイルこそ3連覇を成し遂げた要因である。

 広島の代名詞とも言える猛練習も「純血主義」が支える。広島の練習量のすさまじさは誰もが知るところ。前回のコラム(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54341)で指摘した育成方針もあるが、猛練習によるたたき上げでチーム作りを行ってきた。2軍大野寮にある石碑には「練習ハ不可能ヲ可能ニスル」と刻まれており、チーム内でも「練習は嘘をつかない」という考えが根付いている。

 特に近年は主力に20代が多く、まだ練習量をこなせる体力があるだけに、練習から手を抜かない姿勢が若手へ好影響を与えている。

 これを実現させられるのも、生え抜きの指導者がイズムを注入するからこそ。選手の姿勢やプレースタイルにも広島カラーが浸透していくわけだ。

 ただ、だからといって「3連覇」ができるわけではない。長く続いた低迷期を脱するきっかけとなったのは、他球団を知る〝外様コーチ〟の存在だった。