広島カープの新井貴浩選手が今シーズン限りでの引退を発表した。プロ生活19年、315本塁打、2178安打。華々しい実績を持つベテランだが、本当の貢献は、数字だけで計ることはできない。ベテラン、若手を問わず慕われた性格と野球への姿勢こそが、新井貴浩たらしめていた。
3連覇へと突き進む広島カープのなかで、新井選手はどんな貢献をし続けているのか。(JBpress)
カープの圧倒的な打撃力にある「新井の存在」
「やっぱり、新井なんよ。新井の存在がでかい」
昨年、広島カープの打撃コーチを務めていた石井琢朗氏(当時/現・ヤクルトスワローズ打撃コーチ)に「広島カープの打撃陣好調の理由」を聞いたとき、そう繰り返していたことが忘れられない。
このとき、新井はレギュラーとは言えない立ち位置にいた。むしろ、前年(2016年)セ・リーグMVPを受賞した成績からすると、「数字上」は物足りないものだったといえる。
現在、2位のヤクルトに14ゲーム差をつけ圧倒的な強さで3連覇への道を着々と進むカープ、その強さの理由を問われれば多くが「打撃力」と答えるだろう。
投手力にも際立つものがあるが、打撃陣のここ3年の質は異次元のレベルにある。
2016年のチーム打率が.273、得点数が684。
2017年がチーム打率.272、得点数736。
そして今シーズンは25試合を残して.268、618得点。
このままのペースでいけば748得点と昨シーズンを上回る数字となる。今シーズンのチーム打率こそヤクルトの.269に次いでいるが、それ以外は断トツの1位である。そのすごさは2位チームのそれと比較するとわかりやすい。
2016年、チーム打率、得点の2位がいずれもヤクルトで.256、594得点(広島が.273、684得点)。
2017年はチーム打率、得点2位がDeNAで.252、597得点(広島が.272、736得点)。
今シーズンの得点数の2位が巨人の556(広島が618得点。ただし巨人のほうが試合消化が6試合多い)。
そんな圧倒的な力を支えるのがレギュラーではなく、前年より成績が下回っている新井貴浩の存在――? もちろん、ここぞ、というときに代打で登場し逆転打を放つなど、存在感を発揮したシーンは数多く、広島の躍進に欠かせないピースではあったのだが、特筆すべき選手を挙げるとすれば、昨年で言えば安部友裕や丸佳浩や鈴木誠也なのでは、と思った。
だから石井コーチの言う、「打撃陣好調の理由=新井の存在」という式が、すぐには呑み込めなかった。