1回戦で敗退した強豪・智弁和歌山の練習風景(写真:浅尾心祐)

 過去最多の56校が出場する夏の甲子園100回記念大会。
 今日で一回戦の全日程を消化し、すべての代表校が登場する。それは一方で半分の高校――28校が敗退したことをも意味する。
 最上級生となる3年生にとっては高校野球人生の終わり。部活動の間では「引退」と呼ばれる。球児から元球児となり、公式戦を戦うこともなければ、多くは練習をすることもなくなる時間――この時期こそが一番重要だ、と語る人がいた。

 近江対智弁和歌山。

 7対3というスコアからもうかがえるとおり、近江は強かった。強力な打線にノーエラーで試合を終え、継投をふくめたピンチでの対応は試合巧者ぶりを思わせた。

 ただ、今年の智弁和歌山も「優勝候補の一角」と評されるに偽りのない強いチームであったことは間違いない。

 智弁和歌山の新チームになって以降の成績は、圧巻だ。

 秋季和歌山県大会、優勝。
 秋季近畿大会、準優勝。
 選抜甲子園、準優勝。
 春季和歌山県大会、優勝。
 春季近畿大会、準優勝。

 公式戦では3試合しか負けておらず、いずれも決勝戦での敗戦である。

 そして、その3敗はすべて大阪桐蔭に喫したものだった。加えて言えば、2017年以降の公式戦の敗戦は大阪桐蔭以外にない。現在の3年生が2年生だった夏の甲子園、そして近畿大会、いずれも大阪桐蔭の前に屈した。

 2017年から公式戦での黒星は5つ、そのすべてが大阪桐蔭だったのである。

 大会前、智弁和歌山のグラウンドに取材に行くと選手たちから出てきた言葉は、やはり「大阪桐蔭」だった。キャプテン・文元洸成の言葉が思い出される。

「この夏に日本一になるというのを最終目標に智弁和歌山に入って頑張ってきて、その過程のなかでは、大阪桐蔭を倒さないと日本一になれません。これまでだったらどれだけいい試合をするかというところに目を向けがちだったんですけど、この夏はどんな内容でも、どんな形でもいいのでとにかく勝ちにこだわっていきたい」

 それは智弁和歌山のどの選手にも共通する思いで、例えば2年生の多くがつけていた「野球ノート」には、「大阪桐蔭に、夏は勝つ」といった言葉が並んだ(このあたりは『野球ノートに書いた甲子園FINAL』〈幻冬舎刊〉を参照されたい)。

 甲子園でもっとも勝利してきた名将であり智弁和歌山高校の監督である高嶋仁は大阪桐蔭をこう評した。

「難敵ですからね。強敵と違いますよ、難敵。難しい敵です」