もちろんこうした行為は今に始まったことではなく、これまでも問題視されていた。だが昨今のSNSの普及や環境問題への意識の高まりが、強い反発の醸成に一役買うこととなった。
この騒動により追い込まれたバーバリーは、2018年9月にプレスリリースを公開、「バーバリーは直ちに、売れ残った製品を破壊する行為を止めることにした」と発表せざるを得なかった。
もっとも、この問題は何もバーバリーだけの話ではない。他にも同様に新品の衣料品を焼却処分などで破壊している企業は少なくない。ただ温暖化対策への意識が高まっているいま、こうした環境にストレスを与える無駄な行為を防ぐ手立てについて、いろいろと議論になっている。
そもそも、この売れ残りの「廃棄処分」の問題はどれほど蔓延しているのか。
最近、バーバリーと同じようなタイミングで、新品の廃棄処分が問題視された企業がある。高級ブランドのカルティエやピアジェなどを傘下に持つスイスのラグジュアリー製品大手リシュモンだ。リシュモンは5月、売れ残った高級時計の値段が下がるのを懸念し、過去2年で5億ユーロ分の製品を廃棄処分にしたと報じられた。
その背景には、アジアでの売り上げ減があった。低迷の原因のひとつとされるのが、中国政府の汚職撲滅政策で、これまで官僚などのギフトにされてきた高級腕時計などが大量に売れ残っているのだという。結果として、あぶれた商品がヤミ市場で安売りされ、商品のイメージダウンや価値が下がりかねない状況になった。そこで同社は時計などを買い戻し、バラバラに解体、金などは再加工され、部品はリサイクルに回されているという。だが実態は、多くが廃棄処分にされているとも指摘されている。いずれにせよ、環境に優しいとは言いがたい対策だ。
またスウェーデンのファストファッション大手H&Mも、デンマークのテレビ局による調査報道で、2013年から60トンに及ぶ製品を焼却処分にしていると指摘されている。H&Mは、「破損などがあったり安全ではなかったりする製品」を処分しているだけだ、と否定しているが、報道では、きちんと調査した結果、安全な製品も焼却されていたと結論付けられた。
アマゾンも家電や家具を廃棄処分!?
こうしたメーカー以外にも、廃棄処分の疑惑はいくつも噴出している。しかも、問題はファッション系ブランドにとどまらない。ドイツのTV局によれば、ネット通販大手アマゾンも、ドイツで新品や返品された製品を廃棄処分にしているという。実際に処分に従事したことがある従業員への取材から、冷蔵庫や洗濯機、携帯電話からマットレス、家具までが廃棄されている実態を明らかにした。
この話は、日本も他人事ではない。実は、日本では売れ残った衣料品がどれほど廃棄処分されているのかについて詳細で正確な数字は見当たらないが、日経新聞は9月26日に「日本だけでも廃棄量は推定年100万トンに近く、その多くが焼却処分される」と報じている。朝日新聞も7月3日付けの記事で、「再販売される一部を除き、焼却されたり、破砕されてプラスチックなどと固めて燃料化されたりして実質的に捨てられる(新品衣料の)数は、年間10億点の可能性があるともいわれる」と指摘している。どうやら日本もかなりの数の売れ残り品を廃棄処分にしているらしい。
どうして、これほど大量の“廃棄対象品”が生まれてしまうのか。もちろん最大の理由は、需要予測の“読み外し”だ。バーバリーの場合も、販売時点で需要と供給がマッチしていなかった。今年売れ残りが増えた理由は、中国での消費の冷え込みが背景にある。高級時計を売るリシュモンのような企業も同様で、時計の生産は2年も前に始まるため、販売される際には汚職撲滅政策で需要が変化してしまっていた。
イメージが大事な高級ブランドなら、すでに述べた通り、売れ残りをセール品などにすることでブランドイメージが崩れるのを避けたいという意識が働く。高級路線らしい価格を維持するためになら、売れ残った商品は焼却処分にしてしまうほうが得策ということだ。