ベンチャーを阻む規制の網は、どのようにして取り除けるのか。

 前回は、ベンチャーエコシステム(生態系)について振り返り、日本のベンチャーを取り巻く環境には何が足りないのか、さまざまに指摘してきた。

【第2回】「日本のベンチャーの生態系、足りていないのは何か?」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54139

 では、これからベンチャーエコシステムの、地面の下で見えていない労働市場と教育について話を進めていくこととしたいが、その前に、地面の上の空気についても触れておきたい。森の生物も、空気が悪くては健全には育たない。

 それは規制である。事細かな規制の網が空を覆い、日光が遮られているため、森の樹木はすくすくとは育たない、というのが今の日本の状態ではないか?

自動車と規制の歴史

 ベンチャーが、これまでの想定を超える機器やサービスを現実社会で広めようとするとき、従来の規制が立ちはだかることがある。

 その例として、古くは19世紀イギリスの「赤旗法」という規制がある。当時はまだ蒸気自動車の時代であったが、規制当局としては馬車に代わるこの新たな乗り物をどのように扱ったものか相当悩んだようだ。

 そこで、1865年の法律で、安全のため、蒸気自動車の時速を郊外では6.4km/h、都市部では3.2km/h以下に規制するとともに、赤旗を携行した保安要員を車両の前に歩かせることとした。

 このような厳しい規制の結果、イギリス自動車産業はライバルのドイツやフランスに後れを取る結果となったと言われている。もちろん、その後イギリスでも徐々に規制緩和を進めていくのであるが、時すでに遅しとなってしまった。

 現代でも同じような事例は枚挙にいとまがない。