米国・ワシントンの連邦議会議事堂

 トランプ政権は、昨年(2017年)末から本年初頭にかけて、アメリカの国防戦略を「世界的対テロ戦争に打ち勝つ」という基本方針から「大国間角逐に勝利する」という方針に大きく変針した。

 この方針を実施するには、米軍各軍(海軍、空軍、陸軍、海兵隊)が大国間角逐に勝利するための戦略を策定し、必要な作戦概念を生み出し、新戦略に適応した組織の改編を進め、大国間戦争に耐えうる武器装備を整えねばならない。

 一方、先日亡くなったマケイン上院議員が長らく主導してきた連邦議会上院軍事委員会では「各軍における戦略シフトに関する対応は極めて遅い」と指摘し、次のような警告を発している。「アメリカ軍の主敵は市街地戦や山岳砂漠戦でのテロリストやゲリラではなく、強力なハイテク軍事システムを身につけている中国軍やロシア軍となっていることを自覚しなければならない」。

 そして、このような強い危惧を具体的な形で示したのが、このほど成立した国防費に関する2019年会計年度歳出法である。国防総省が提出していた国防予算案を叩き台にして連邦上下両院がそれぞれ策定した国防費歳出案を、上下両院でさらに調整して法令化した法律である。

増額された海洋戦力関係費

 新たな歳出法によると、ホワイトハウスが提出した国防予算要求に対して、海軍省に関しては4.9%増額、空軍省は1.2%増額、陸軍省は0.9%増額ということになった。このように国防費の歳出額が増額された要因は、海軍の艦艇建造費と全軍(海軍、空軍、陸軍、海兵隊)の航空機調達費が大幅に押し上げられたからである。