「非核化」への意思を表明しながら、一向に実行する気配を見せない北朝鮮。建国70周年の軍事パレードでは弾道ミサイルを封印したが、その裏で核戦力を強化しているという情報もある。北朝鮮の非核化への取り組みを評価するトランプ大統領は、欺かれているのか? 軍事ジャーナリストの黒田文太郎氏が、金正恩委員長の狡猾な交渉術を読み解く。(JBpress)
トランプ大統領が「ありがとう」
9月9日、北朝鮮は建国70周年の軍事パレードに、注目されていたICBMはおろか、核戦力の要となる弾道ミサイルを登場させなかった。北朝鮮自身はその意図を説明していないが、仮に「火星15」や「火星14」などを登場させた場合、アメリカのトランプ政権が反発する可能性もあったことから、対話を継続したい北朝鮮としてはその危険を避けたということが推測される。
実際、トランプ大統領はそれを受けて、すかさずツイッターで金正恩委員長に「ありがとう」と謝意を表明。「北朝鮮による(非核化への)きわめて前向きな意思表示」「我々はともに、(非核化実現に批判的な)人々が間違っていることを証明するだろう」と最大限の歓迎コメントを発信した。
また、翌10日には、ホワイトハウスのサンダース報道官が「金正恩委員長がトランプ大統領に2回目の会談を打診」してきたことを公表。受け入れる方向で調整中であることを明かした。
「冷えた雰囲気」を変えようとした北朝鮮
米朝関係は、6月12日の米朝首脳会談以降、取り立てて大きな動きはなかった。非核化をめぐる交渉も遅々として進まず、8月末に予定されていたポンぺオ国務長官の4度目の訪朝も直前に中止になっていた。