米イージス艦の衝突事故、「回避可能」だった 報告書を公表

衝突事故を起こし横須賀基地の乾ドックに入った米海軍のイージス駆逐艦「フィッツジェラルド」。米海軍提供(2017年7月13日撮影。8月18日提供)。(c)AFP/US NAVY/Christian SENYK〔AFPBB News

 海軍艦艇による弾道ミサイル防衛のためのパトロール任務は、戦略環境の激変という観点からは、アメリカ海軍にとってこの上もない足枷となっている──アメリカ海軍作戦部長ジョン・リチャードソン海軍大将(米海軍軍人の最高位)は、アメリカ海軍大学校での講演でこんな趣旨の発言をした。

BMD任務が駆逐艦衝突事故の遠因に

 リチャードソン大将によると、現在アメリカ海軍は弾道ミサイル防衛(BMD)のために高性能多用途戦闘艦であるイージス駆逐艦を多数割り当てているため、海軍がこなすべきBMD以外の様々な任務を犠牲にせざるを得なくなっているという。

 昨年(2017年)、第7艦隊で民間船舶との衝突事故が頻発した(4件のうち2件は重大事故で、2隻のイージス駆逐艦は使用不能となってしまい、現在修理中である)。これらの事故の原因の1つは、駆逐艦乗務員たちの訓練不足であったと事故調査報告書は指摘している。このような深刻な問題も、イージス駆逐艦やイージス巡洋艦がBMD任務に従事している時間が長すぎるために、海軍本来(伝統的意味合いで)の任務に従事する時間が短くなり、船乗りとしてのスキルが低下してしまったからだということができる。

軍艦配置のやり繰りに苦悩する米海軍

 実際に、アメリカ海軍は日本とヨーロッパに10隻以上のBMDを主たる任務とするイージス駆逐艦を展開させている。そのため、空母打撃群によるパトロール任務や水陸両用即応群によるパトロール任務、それに南シナ海はじめ世界中の海で実施している公海航行自由原則維持のための作戦(FONOP)などに割り当てるイージス巡洋艦やイージス駆逐艦のやりくりが厳しい状況になってしまっている。