広島市環境局中工場

広島市環境局中工場、広島市、設計:谷口建築設計研究所、竣工:2004年

 谷口吉生といえば、豊田市美術館、東京国立博物館法隆寺宝物館、ニューヨーク近代美術館新館など、美術館の名作をいくつも手がけて高く評価されている建築家だが、ここではあえて、別のジャンルの建物を挙げておこう。広島市のゴミ処理工場だ。

 大きな直方体のボリュームをアルミ材で覆った外観は、一般的なゴミ処理工場と大差ない。違うのは手前に突き出したブリッジから誰でも建物へ入っていけるようになっていることだ。中に入ると、ガラスでできたトンネル状の通路が奥へと続いている。自然光で満たされた空間からは、大量のゴミを処理する巨大な装置群を見学できる。

 「エコリウム」と名付けられたこの公共的な通路は、広島平和記念公園から南へと走る吉島通りを延長した位置に配されていて、都市との連続性が意図されている。通路はそのまま真っ直ぐに延びて外へ。そこから眺められるのは、美しい島々が浮かぶ広島湾の風景だ。窓がほとんどない工場建築を光の筒が貫通して、都市と自然がつながれる。

 ここを通り抜ける体験は、都市から生み出される廃棄物を環境に悪影響を与えないものに変えて自然へと返すという、ゴミ処理施設の役割を再認識させてくれるものにもなっている。

金沢海みらい図書館

金沢海みらい図書館、金沢市、設計:シーラカンスK&H、竣工:2011年

 金沢駅から海に向かう途中にある金沢市立の「金沢海みらい図書館」。大きなケーキの箱のような単純な形に公共図書館の機能をすべて入れている。

 特徴的なのは、設計者が「パンチングウォール」と呼ぶ壁面のつくり方。通常の建物なら、タイルや石などで仕上げた光を通さない部分と、ガラスを張った光を通す部分に分かれ、その組み合わせで壁面ができている。しかしこの建物は、全体が水玉模様で覆われている。そしてこの水玉にはすべてガラスがはまっており、壁全体が半透明のフィルターのようになっているのである。