文部科学省の元事務次官、前川喜平さんの一連の勇気ある言動に私は好感を持っており、何かのレジームチェンジで彼が文部科学大臣に任用されたら、日本の教育はずいぶん良くなるのではないか、と思っていました。
しかし、週刊東洋経済で目にした対談記事を目にして、もし本当ならこの見解に留保をつけねばならないかもしれないと思い始めています。
記事によると、貧困の元凶の1つである「高校中退」を防止するのが重要という論旨の中で「中退をなくすには数学の必修を廃止するのがよい」との発言がありました。
私は、そのようには思いませんし、そのような考えの人物が文部科学大臣に就任などした日には、破壊的なことになるのは目に見えていますので、問題の所在と対案を含め、建設的に考えてみたいと思います。
まず教育崩壊の現状から考えてみます。
リメディアル教育に追われる大学教員たち
値引きのない現実から直視していきましょう。高校中退は確かに問題でしょう。しかしことは行政の問題です。
中退率を見てみると、平成8-13年度にかけての中退率がピークで2.5%程度、そののち2%程度で推移し、平成23年度以降のは1.6%程度と減少の一途をたどっているようです。
もし違う統計、より詳細な数字をご存知の方がありましたらご教示いただければ幸いです。要するに、中退者はピーク時でも3%もいない。97%が「普通に高校を卒業している」ことになっている。
現状では98.5%ほどが卒業、1.5%の中退者をなくすために全員必修の数学に手をつけることが国の教育政策として必要か、また有効か、と考えなければなりません。
そこで、現実に高校を「卒業」したはずの学生生徒の学力の現実に目を向けてみると・・・。