たとえ涙が今にもこぼれそうでも、そんな時だからこそ笑顔を絶やさず
ほら笑って、泣いてどうするの?
笑顔でいれば“人生、まだ捨てたもんじゃない”と思う時が来るから・・・
ナット・キング・コール
ことわざ「笑う門には福来る」と同じ教えが歌詞に組み込まれているのだ。ジャズボーカルの歌にはこうした人生の指南書的ものが少なくない。馴染みある名曲も歌詞をじっくり味わうことで深みを増して聴くことができる。人生を見つめ直すとき、新たな扉を開くとき、そっと背中を押してくれるジャズがすぐそばで流れていることを知ってほしい。
さて、この傑作をどのアーティストで堪能するかだが、やはり元祖の歌声、ナット・キング・コールNat King Coleをお薦めする。包容力ある喉の響き美しい“ナッキンコール”は唯一無二だ。最後に、人が生きるうえで笑い、喜ぶことが重要だと教示するこの「Smile」を作曲したのは、あの喜劇王チャーリー・チャップリンであることを付記しておく。
※「Smile」全訳はこちら
Rainy Days And Mondays アン・バートン
アン・バートン
1970年代になると、多くのジャズボーカルはスタンダード曲に加え、当時の流行歌も歌うようになった。ただ彼らの手にかかるとポップスもジャズになる。それは歌詞を独自の世界観で“語る”からだ。これこそがジャズボーカルの真骨頂であり虜になる部分と言っていい。
ここで紹介するアン・バートンAnn Burtonはオランダ出身のジャズボーカルで、アメリカのシンガーのような派手さはないが、ていねいに歌詞を伝えるそのスタイルはどの曲も趣きあるものにする。カーペンターズの大ヒット曲、邦題「雨の日と月曜日は」も彼女の語りで聴くと、カーペンターズのそれとの違いに驚きを覚えるだろう。
独り言をつぶやいては 歳を取ったなって感じる
時には投げ出してしまいたくなる
何かどうにもしっくりこなくて
雨の日と月曜日はいつも私を憂うつにする・・・
アン・バートンはこのラブソングを人生の陰陽の法則の歌へと変化させているようだ。つまり雨が降るからこそ晴れた日には花が開き、悲しみや不安があるからこそ人の温かみや愛を感じられるというように。人生には雨の日や孤独の月曜日も必要なのだと、深い気づきを与えてくれる。ぜひジャズボーカルの真価をポップス曲でも味わってほしい。
※「雨の日と月曜日は」全訳はこちら
つづき(残りの4曲)はこちら
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52848