在日中国人の数は、日本国籍取得者らも含めると90万人を超えると言われている。やや古い情報だが、2014年の『日本新華僑報』の報道によると彼らの出身文化圏は遼寧省・黒竜江省・吉林省の東北三省(旧満州)出身者が約35.5%、福建省出身者が約9.5%と続き、その次に位置するのが上海出身者の約8.4%だという。
もっとも、同じ中国人でも彼らの事情は異なる。留学生や就労者(技能実習生など)として続々とやってくる東北人や、すでに来日済みの同郷の知人のネットワークを通じて来る福建人(多くは福州市や福清市の出身者だ)は、地元の就業市場が限られていることもあり日本を目指し続けている。
だが、一方で筆者の感じる範囲では、上海人の増加は頭打ち傾向にある。
なぜなら、いまや2017年の常住人口の1人あたりGDPが12.46万元(約207万円)に達する「先進国」水準の都市・上海から、業務上の赴任や留学以外の理由でわざわざ日本へ移り住むメリットは薄くなってきたからだ。現在の日本で、中華料理店やチャイナパブなどを経営している上海人の多くは、まだ中国が貧しかった1980~90年代に裸一貫でやってきたベテラン組である。
「私は上海大学卒ですが、90年代前半に離婚してから日本に留学して、生活のために水商売をやるうちいつの間にか店のママになった。国内に残った親戚や友人は、地方都市の幹部になったり会社をやったりしてみんなお金持ち。人生を損したかなあと思うときもあります」
こちらは筆者の友人の、東西線沿線某駅でチャイナパブを営む上海人のママさん(51)の話だ。彼女に限らず、日本にいる一定年齢以上の上海人たちはこのように「人生、間違ったかなあ」とこぼす人も多い。
90年代当時は圧倒的な先進国だった日本に、中国からかろうじて留学できたのは先進地域の北京や上海で暮らすエリート層の人たち。ゆえに彼らは日本国内でも、一般の日本人と同じかそれ以上の経済的成功を収めた人が少なくない。だが、本国の同年代のエリート層はいつの間にか彼ら以上に豊かになってしまい、一種の逆転現象が起きてしまった。