2018年2月5日、韓国・ソウル高裁は、朴槿恵(パク・クネ=1952年生)前大統領への贈賄などで1審で懲役5年の実刑判決を受けていた李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長に対して「懲役2年6か月、執行猶予4年」の控訴審判決を下した。
李在鎔副会長は、約1年ぶりに釈放された。
執行猶予付き判決で釈放になったことを、李在鎔副会長もサムスンも「ひとまず歓迎」しているはずだ。だが、李在鎔副会長の今後には、依然として厳しい問題が山積している。
1審と全く異なる判決
「韓国は3審制で、下級審判決を上級審が覆すことがあっても当然だが、今回のように全く異なる判断をすると、司法全体への信頼が損なわれることはないのか?」
判決から一夜明けた2月6日朝、KBSラジオのニュース番組で、司会者が判事出身の弁護士にこう質問した。それほど、地裁と高裁の判決には大きな差があった。
今回の争点を簡単に整理しよう。
サムスングループは、朴槿恵前大統領の長年の知人である崔順実(チェ・スンシル=1956年生)が事実上設立運営したスポーツ・文化財団に巨額の資金を拠出した。さらに乗馬選手だった崔順実氏の娘のために高額の馬を購入し、海外訓練も支援した。
特別検察は、サムスンが拠出した金額は433億ウォン(1円=10ウォン)と算出した。こうした資金拠出は、「李在鎔副会長がサムスングループの経営権継承を進めるために大統領(当時)に不正な請託をした対価」だったというのが、特別検察の見方だ。
2017年8月の1審判決は、この見方を概ね認めた上で、金額を88億ウォンとして、「懲役5年」の実刑判決を下した。