(文:白戸圭一)
1980年のジンバブエ独立以来、37年にわたって政権の座にあったロバート・ムガベ大統領(93歳)が2017年11月19日、辞任を表明した。
「アフリカの部屋」に11月17日にアップされた拙稿「ジンバブエ『軍事クーデター』引き金はムガベ大統領『夫人』」では、このたびのジンバブエにおける事実上のクーデターが従来のアフリカにおけるクーデターとはいくつかの点で異なることを指摘した。その後のムガベ氏の大統領辞任表明に至る経過を見ていると、一連のプロセスが現行憲法の枠組みの中で進行している点が極めて興味深い。
アフリカでかつて発生したクーデターは、蜂起した軍が戒厳令を布告し、憲法停止と議会解散を実行したうえで、権力機構の全体を刷新するのが一般的であった。
しかし、ジンバブエ国軍は今回、グレース大統領夫人とその一派を政治的に排除した点では武力にモノを言わせたものの、大統領に自発的な辞任を促し、ムガベ氏がこれを拒否したとみるや、現行の議会が大統領の弾劾手続きに向けて動き出した。
今後は、ムガベ氏によって11月6日に第1副大統領を解任されたエマーソン・ムナンガグワ氏(75)が復職し、大統領不在の場合は第1副大統領が大統領職を代行することを定めた憲法の規定によって、暫定政権を率いることになる。
注目されるアフリカ諸国の反応
ジンバブエ国軍は、なぜ自らの行動を「クーデター」と見なされることを拒否し、法に則る形で新権力の正当性を担保する道筋にこだわっているのか。
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