そもそもカーシェアリングは日本やアメリカでも、1回あたりの売上規模が小さなビジネスとして知られる。その欠点をカバーするには、大量の車両を市場に投入して「数」の力で売り上げを積み上げるしかない。

 だが、EZZYは昨年3月のサービス開始時に全国で500台を投入後、なんと今年10月の倒産まで台数がまったく増えなかった。そのうち北京付近に投入されたのはわずか120台で、しかも故障などで(後述)まともに営業運用に耐えるのはその半分しかないありさま。アプリを使った無人のカーシェアなどという「意識の高い」商売ではなく、係員がいる普通のレンタカー店を地道に経営したほうがマシに思える惨状である。

 CEOの付強が2016年8月に発表したところでは、EZZYが駐車スポットに置いたシェア高級車はさまざまなイタズラを受け、1カ月内にタイヤ破損が48件、車両破損が2件、車載コンピュータ端末の取り壊しが5件、無理矢理に別の場所に運ばれる事件が1件あったとのこと。毎日、わずか500台の投入車両のうち1割は常に修理中だったそうで、目も当てられない。

 また、ユーザー側の責任感が強い日本や欧米の社会と違い、中国のユーザーは車両をぶつけてもほったらかしで返却することが多く、しかも無人管理なので誰が壊したのかもよく分からないことが多かったという(保険はどうなっていたんだろう?)。経営の迷走によって会費やデポジット額が途中で改変されたことも、ユーザーの間で不公平感が広がって客離れを招いてしまった。

 今年6月には、EZZYの車両に中国の道路交通法で義務付けられている車両登記証や車両保険証が載せられていないことを『北京商報』が暴露。散々な事情が積み重なり、EZZYは空中分解に至るべくして至ったわけである。ビジネスモデルから法令遵守まであらゆる面でツメが甘かったのだが、そんな企業のサービスにも4000万元の投資が集まってしまうのが、現代中国のイノベーション・バブルだと言えるかもしれない。

「シェア充電器」業界の連なる屍

 シェア自転車に次ぐ中国版のシェアリングエコノミーの成功事例とみられがちなのが「シェア充電器」だ。ホテルや喫茶店などに置かれ、スマホの充電ができる。今年5月には化粧品オンライン販売大手の「聚美優品」が、2015年創業のシェア充電器大手「街電」に3億元(約51億7000万円)を投じて株式の60%を保有したことが報じられた。