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カタルーニャがゼネスト実施へ、スペイン警察に抗議 大学や観光名所も

スペイン・カタルーニャ自治州の州都バルセロナで、カタルーニャ独立派の旗「アスタラーダ」を掲げてデモを行う市民ら(2017年10月2日撮影)。(c)AFP/PIERRE-PHILIPPE MARCOU〔AFPBB News

(文:大野 ゆり子)

 10月10日夜のカルレス・プチデモン・カタルーニャ州首相の州議会演説は、大国の重大発表のように国際的な注目を集めた。予定より1時間遅れて議会場に入った首相は、地方紙記者を長年勤めた習性なのか、最後まで推敲にペンを走らせた原稿を手に、約1時間にわたって演説した。

 始まってから約20分後、「先日の投票の結果によって、カタルーニャは独立した共和国となる意思表示を行った」と述べたが、その10秒後に、「スペイン政府との緊張を緩和すべく対話を求め、独立宣言を凍結する」と述べた。これに対し、スペインのマリアーノ・ラホイ首相は12日、「これは独立宣言なのか、そうでないのか」を16日までに明確にするよう求めた。

 スペイン憲法155条では、州が国の利益を損なうとみなされた場合、国会決議によって州の自治権を停止することができる。プチデモン首相の回答が「イエス」であった場合、独裁者フランコの死後、1978年に制定されたスペインの民主憲法下で初めて、州の自治権が停止される事態が現実味を帯びてきた。

断絶の深さ

「めまいのような」というのが、この2週間の動きを地元紙が形容する表現である。

「国」(スペイン)が禁止し、「州」(カタルーニャ)が奨励し、「市」(たとえばバルセロナ)が中立の立場を取る異常な状態で住民投票をさせられる、一般市民の気持ちをご想像いただきたい。約4割の住民が投票に行ったが、投票を阻止するスペイン治安警察と市民の間で、約900人の負傷者が出た(州政府発表)。

 スペイン政府が、治安警察の暴力をすぐに謝罪しなかったことで、事態はいっそう複雑になってしまった。9月末からの中央政府による徹底した投票阻止によって、カタルーニャの市民の間には、フランコ時代の弾圧の中にいるような気持ちが広がっており、10月1日の警察の暴力は「手段を選ばない抑圧」のイメージにあまりにもピッタリとはまったのである。

 この時点では、投票に行った市民は「弾圧するスペインに屈せず、自由のために闘う勇気ある人々」であり、投票に行かなった人は「体制に順応して現状に甘んじる人々」という論調が地元メディアにもあった。

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