(文:仲野 徹)
作者:小松 政夫
出版社:扶桑社
発売日:2017-08-22
めったにテレビドラマは見ない。しかしNHKの『植木等とのぼせもん』だけは別だ。録画してまで見ている。ドラマの出来がいいのはもちろんだが、あの時代の空気がなんともなつかしい。小松政夫が淀川長治の真似で解説するのもいい。おいおい、若い人が見ても、誰が誰の真似してるのかわからへんのとちゃうのか、と思わないでもないけれど。
“なんでぇ、タモリなんてみんなありがたがっちゃってよぉ、
あんなもん好きなヤツは、俺から言わせりゃエセインテリだよね、
おいらヤダね”
誰の発言かわかるだろうか。40年前、MANZAIブームの前に、たけしが人気の出だしたタモリを評した言葉だ。こんなエピソードがバンバン出てくる本、一気に読んでしまった。
ドラマで見る谷啓は、かなりカリカチュアライズされているのではないかという気がしていた。自宅の応接室に雀卓が置いてあるのも気になっていた。しかし、どうやら実話に近いようだ。
不審火で谷啓の家が全焼した時の話。火事見舞いに人がたくさん来るのだが、気を遣いすぎる男・谷啓は、みんなが辛そうな顔をしてくれるのが悲しくてたまらない。それがいやさに、焼け跡のど真ん中に卓を組んで近所の人と麻雀を始め「元気ですよー! 元気ですよ-!」と目をパチパチさせながら頭を下げていたという。まるでコントだ。