民進党は9月28日の両院議員総会で、東京都の小池百合子知事が代表を務める「希望の党」に合流することを決めた。民進党は政党として衆議院選挙に届け出ず、今まで出した公認も取り消し、議員は離党して希望の党に公認申請を行う。公認するかどうかは、希望の党が決めるという。
これは実質的には解党である。今週できたばかりの新党に、かつて政権を担った党が吸収されるというのは、常識では考えられない。私も最初はマスコミの勇み足だと思ったが、結果的には両院議員総会で了承された。何がこの急転回をもたらしたのだろうか?
「身売り」せざるをえなかった民進党
今年の東京都議会選挙では、彼女の「都民ファースト」が、自民党も上回る第一党になった。彼女には政策も行政手腕もないが、「改革」のイメージだけはあるからだ。
「安倍はヒトラーだ」などという人がいるが、安倍首相はヒトラーとは逆のコンセンサスを重視する政治家だ。小池氏のようにイメージだけで売り込むポピュリストは、日本では橋下徹氏ぐらいだが、彼には「大阪都構想」という目的がそれなりにあった。
ところが小池氏は、何をしたいのか分からない。「エコ」のイメージで売り込み、いつも緑のスーツを着ているが、豊洲市場の移転問題では「ゼロリスク」を主張して、都政は迷走を続けた。このとき石原慎太郎元知事を悪役に仕立て上げ、都議会で吊し上げた。
これがいま世界的に流行しているポピュリズムである。ヒトラーからトランプ大統領に至るまで、そのパターンはよく似ている:中身はないが、イメージづくりはうまい。組織は弱いが「共通の敵」をつくる。大衆をバカにして、意味不明のバズワードを振りまく。
こういう「世界標準」のポピュリストは日本にはあまりいなかった。小池氏は東京では成功したが、それだけでは国政政党にはなれない。今回の「身売り」を持ちかけたのがどっちだったのかは不明だが、民進党にはそうするしかない事情があった。