ケント・ギルバート氏のベストセラー本でも引用された、中国共産党の対日工作計画とされる文書『日本解放第二期工作要綱』。この文書が、その作成時期や文章表現・掲載媒体など様々な側面から考察する限りニセ文書としか判断のしようがないことは、すでに前回の記事で見てきた。
(前回の記事)「ギルバート氏も騙された?中国の日本侵略計画ヨタ話」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50922
すなわち『要綱』は、日中国交正常化直前の1972年に右翼系の機関紙で一種の“飛ばし記事”として掲載されてから30年以上も忘れ去られていたのが、今世紀に入り2ちゃんねるのコピペとして拡散。やがて2016年ごろからネット右翼系のまとめサイトで取り上げられ、ベストセラー本で紹介されるほどの知名度を得てしまった、ただのヨタ話なのである。
だが、この手の陰謀論の例に漏れず、『要綱』には熱心なファンも多い。ゆえに、「中国は実際にそういう工作をしているから」「文書の内容は現在の日本で実現しているから」文書の真贋それ自体はそこまで重要ではない、といった主張をおこなう人たちも一定数以上存在する(事実、ギルバート氏自身も著書中でそうしたスタンスで『要綱』を紹介している)。
しかし、実際のところ『要綱』の内容は現実の日本でちっとも実現していない。中国当局がなんらかの対日工作をやっていることは事実だとしても、それは『要綱』とは異なった形で実行されている模様だ。今回の記事ではそれらを見ていこう。