データからも明らかなように、ダダ下がりである。すなわち、日本人の対中好感度は1989年の天安門事件で5割を割り、さらに2004年ごろから表面化した反日運動で下がり、2010年の尖閣沖漁船衝突事件でまた下がり・・・と、階段式に減少し続けている。上記は内閣府の調査であるためか数字がマイルドだが、新聞各社の調査では近年の日本人の対中好感度はわずか5%程度というデータすらある。
なお、日本人の目から見ると全世界から嫌われているように思える中国だが、日本をのぞく世界各国の対中感情は決して悪くない。例えばワシントンのピュー・リサーチ・センターの2015年の調査によれば、パキスタンやロシア、アフリカ各国などは80%前後の好感度を誇る中国大好き国家ばかり、他国でもおおむね国民の過半数が中国に好感を持つ例が多い。

好感度が低い国でも、歴史的に対中感情が悪いベトナムやウイグル問題に懸念を示すトルコを除けば、アメリカ・カナダ・ドイツ・スペインなどの対中好感度もおおむね40%前後はある。調査対象国のなかで唯一10%を割っているのは日本だけで、極端な「中国嫌い」は、実は世界的に見ると日本に特有の傾向であるとすら言っていい(右のグラフ)。
『日本解放第二期工作要綱』において、個別の対日工作をおこなう大前提とされた「全日本人に中国への好感、親近感を抱かせる」という目的は、世界基準で見ても突出して大失敗しているわけである。
事実、現代の中国に対して親近感を抱く日本人は、中国ビジネス関係者や中国人の配偶者を持つ人、私のような「中国オタク」(=一般社会的にはただの変人)などの少数の例外を除けば、ほぼ皆無に等しいはずだ。「『要綱』の内容は実現している」と主張する人たちの認識は、そもそも根本的な部分で間違っているとみなすしかない。
「マスコミは中国に操られている」というウソ
『日本解放第二期工作要綱』では、マスコミ工作についてかなり多くの紙幅が割かれている。『要綱』の著者(注:実際は日本人)は、例えば以下のように述べている。
“日本の保守反動政府を幾重にも包囲して、我が国との国交正常化への道へと追い込んだのは日本のマスコミではない。日本のマスコミを支配下に置いた我が党の鉄の意志とたゆまざる不断の工作とが、これを生んだのである”( B.工作主点の行動要領 第2.マスコミ工作)
確かに、1972年当時の日本の主要メディアは日中国交正常化を歓迎する論調だった。当時は左派やリベラルの世論が現在よりも強く、朝日新聞どころか読売新聞ですら、必ずしも右派的な論調ではなかった時代だ。文化大革命を肯定的にとらえたり、林彪の失脚を疑問視したりと、中国当局に有利な姿勢の報道が多く見られたのも事実である。