このほかにも、文在寅政権は、立て続けに新しい政策を打ち出している。大企業と下請け企業との協力拡大、雇用を拡大した企業に対する税額控除の拡大、大企業に対する採用拡大要請・・・。
企業にとってはコスト増加になるこうした要求や政策が続々と出てきているのだ。
企業からは悲鳴も聞こえるが、文在寅政権は、企業を敵と見ているわけではない。企業に闇雲に負担を強いようと考えているわけでもない。
所得主導成長論
「所得主導成長論」
新政権は、あまり聞きなれない、こんな理論に基づいて政策を進めようとしているのだ。
現政権の基本的な考え方は、過去10年続いた保守政権の経済政策は失敗だったと見ることから出発する。
これまでの考え方は、減税や規制緩和などで企業、特に大企業の投資を促すものだった。大企業の企業活動が活発になれば、中堅中小企業に波及する。さらに、賃金が上昇し、消費も拡大する。こうした考え方だったとみる。
「トリクルダウン効果」を期待したサプライサイド経済政策だったというのだ。
だが、この政策で何が起きたか。ごく一部の企業だけが好業績を上げ、役員や従業員は高額な報酬を得る。ところが、ほとんどの企業や中堅・中小、零細企業は苦しいままだ。経済格差は広がってしまった。
「トリクルダウン効果」は幻想だった。
では、どうすればいいか。これまでとは異なる政策を進めるべきだ。それが「所得主導経済論」だ。