核武装のオプションは必要だ

 河野太郎外相は、就任の記者会見で「政府内、あるいは日米の緊密な連携をしながら(原子力)協定のあり方を含め考えていかなければならないと思っております」と答え、「使用目的のないプルトニウムは持たない」というルールに言及した。

 原子力協定の主管官庁は経産省だが、外務省を説得できないとアメリカも説得できない。日本が核武装するには、協定を破棄してNPTを脱退しなければならないが、戦後ずっと対米追従でやってきた外務省が、そんな方針転換をすることは考えられない。

 では北大西洋条約機構(NATO)でやっているように、アメリカが日本国内に核兵器を配備して日米で「共有」することは可能だろうか。それは実は1990年代まで、日本政府が「核密約」でやってきたことだ。

 しかしアメリカの戦略変更で、核弾頭を搭載した巡航ミサイル「トマホーク」は第7艦隊に配備されなくなった。核トマホークはオバマ政権で廃棄され、今では太平洋の核兵器は、アメリカ西海岸の原潜に搭載された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に集中している。

 これによって非核三原則の「持ち込ませず」は意味がなくなったが、「持たず、作らず」は残る。トランプ大統領は選挙期間中に「米軍は撤退するので日本は核武装してよい」と言って物議をかもしたが、就任後は言わなくなった。今の北朝鮮が一触即発の時期に、アメリカがアジアから撤退することは考えられない。

 このように日米関係が複雑骨折したまま、北朝鮮の脅威に対抗することは不可能だ。昔のように密約で「核共有」することはありえないが、アメリカがいつまでも「世界の警察官」として東アジアの防衛コストを負担してくれるとも限らない。

 日本に核武装のオプションは必要だが、今や原子力技術はボロボロであり、このままではいつまで持つか分からない。日本の安全を守るためにも核燃料サイクルを見直して原子力技術を守り、原子力協定を実態に合わせて修正する必要がある。